「シミュレーションが好きなのは、私たちの業界に革新をもたらすからです」ライフサイエンス業界で活躍する女性エンジニア

ダッソー・システムズではエンジニアリング分野を中心に多くの女性社員が活躍しており、また各国の女性ユーザーの皆様に当社製品を活用いただいていることを誇りに思っています。当社のSIMULIAブランドが展開している「Women in Engineeringシリーズ」では、シミュレーションの分野で活躍する優れた女性エンジニアを紹介しています。

今回は、医療器具・機器メーカーであるストライカー(Stryker、米国)のシニアプリンシパルエンジニアであるCheryl Liu博士を紹介します。

 

© Dr. Cheryl Liu (Stryker Corporation)

 

人間の身体は驚くべき能力を備えていますが、無謬ではありません。怪我や加齢によって関節が傷つき、痛みや機能低下が生じることがあります。しかし、医療技術の進歩により、関節の多くは修理や交換が可能になり、運動機能を維持することができるようになりました。

どのような種類の医療用インプラントであっても、インプラントが適切に機能し、身体の他の部分と同調して機能することを確認するために、細心の注意が払われなければなりません。幸いなことに、医療技術の進歩により、インプラントのコンセプトは、規制当局の試験や承認を受けて患者の体内に設置される前に、バーチャル環境で徹底的に評価・最適化することができるようになりました。

 

インプラント・手術器具のシミュレーション

世界有数のメドテック(医療技術)企業、ストライカーの上級主席技師であるCheryl Liu博士は、2021年SIMULIAアメリカ地域ユーザー会において基調講演者でした。基調講演では、「私たちはバイオメカニクス領域におけるシミュレーションの価値を理解しています」と述べています。「また、シミュレーションは、患者やその能力を表現することにも使えるため、様々な患者の体内でインプラントがどのように機能するかをライブラリ化しています。インプラントを設計する際には、ライブラリ化した情報を使って設計を繰り替えし変更し計算しています」

 

また、シミュレーションによって、外科医や患者にインプラントの性能を示したり、手術器具が手術でどのように機能するかを評価したりすることもできます。例えば、Liu博士によると、シミュレーションは、重量や音を減らすことで手術器具を改善するために、より広く活用することができますし、そうするべきだと考えています。使いやすさ、安全性、有効性、耐久性をテストすることは、特にロボット手術の開発において最も重要なことです。

 

「ロボット手術に欠かせないCTスキャンにおいては、患者の骨の3Dモデルを構築します」とリュー博士は言います。「患者とその生体力学的な特性を理解し、外科医がインプラントを挿入したときに、どのような運動学的結果が得られるかを予測できれば、その人に最適なインプラントの挿入位置を見つけ出し、術後の機能を向上させることができます」

 

ストライカーのチームは、インプラントの設計に複数のシミュレーションを使用し、新しい設計が重要な領域でどのように性能要件を満たしているかを理解すると同時に、他の領域で起こりうる性能問題のリスクを把握することができるようにしています。

 

患者別医療の未来

すべての患者に独自のインプラントが設計されるわけではありません。ストライカーでは、実績のあるモデルの広範なライブラリを使用し、シミュレーションによって各症例に適したモデル、サイズ、配置を決定しています。真の患者専用シミュレーションモデルは、患者の四肢の位置、骨形状、軟部組織の制約、可動域を考慮したモデルであり、聖杯だとリュー博士は述べています。

 

「単純化しすぎて、患者固有の既存条件が失われ、モデルの精度が犠牲になることは避けたい」とLiu博士は言います。「しかし、同時に、術中に使用できる真の患者固有のシミュレーションモデルは、効率的に解く必要があります。リアルタイムなソリューションを実現するために、ソフトウェアプロバイダーやSIMULIAと提携し、ソフトウェアの効率性を高める必要があります」

 

ストライカーは、年齢、性別、体力、体格の異なる人々のサンプルから包括的な解剖学的データと歩行ラボデータを収集し、患者固有のモデルのライブラリを構築しています。そのデータは、モデルの較正と検証に使用されます。収集したデータには、下り坂を歩いたり、膝を曲げたりといったさまざまな動作の際に、膝などの関節がどのように動くかという情報も含まれています。スポーツを定期的に行う患者の場合、医療チームは、例えばテニスをするのに最適な可動域を実現するインプラントの種類と位置を決定する必要があります。シミュレーションはこの判断に役立ちます。

 

ストライカー はインプラントの設計と選定という困難な要件に対応するために、SIMULIA ブランドのソフトウェア製品である Abaqus を採用しました。

 

「インプラントの静的な曲げ解析であれば、ほとんどのソフトウェアで可能です」とLiu博士は言います。「しかし、動的な衝撃をシミュレートすることも必要です。軟組織や日常生活動作の制約をシミュレートしたいのです。材料の破壊や破断のシミュレーションも行いたい。これらの高度な機能を実現するには、これらの用途向けに開発・検証された高度なソフトウェアが必要なのです。Abaqus は、こうした高度なシミュレーションのニーズを解決してくれるハイエンドなシミュレーション・ソフトウェアだと考えています」

 

絶え間ない学習プロセス

Liu博士は、ノートルダム大学航空宇宙機械工学科の大学院に入学するために中国から米国に渡ったときに、自分のキャリアが決まったと感じています。中国の学部では工学部の女子学生はほとんどいませんでしたが、米国の大学院では才能ある女子工学部の仲間数人と一緒に仕事をする機会に恵まれました。Dr. Liu はバイオメカニクスの博士号を取得し、2006 年に ダッソー・システムズに入社しSIMULIAを担当しました。2014年にストライカーに転職し、社内に多くの多様なリーダーがいることを知ったそうです。

 

Liu 博士は、ストライカー に入社する前、SIMULIA に在籍していたときに、心血管ステント解析トレーニング教材の構築に取り組み、Abaqus 膝シミュレータと Living Heart Project に関与していました。シミュレーションとライフサイエンスにおける彼女の専門知識は、彼女のキャリアの成功に貢献し、彼女はそれを非常に楽しんでいます。彼女は若い女性や少女たちに、どんな障害があってもエンジニアリングを追求するよう勧めています。

 

「問題を解決し、スキルを向上させ、学び続け、そのプロセスを終わらせないことは、プロフェッショナルとしてとても重要なこと」と彼女は言います。「決して飽きることはありません。常に新しい視点、新しい知識、そして新しい課題に取り組むことができます。この仕事が私をワクワクさせ、それが私の支えになっています」

 

「私は、好奇心を持つことを推奨しています。私は人工膝関節部門に所属していますが、他の部門がどのような取り組みをしているのか、いつも興味があります。彼らをサポートし、その過程で多くのことを学んでいます。いろいろな事に興味を持ち続ける事は、キャリアを構築するために本当に重要でありきっと飽きることないと思います」

 

Liu 博士は、この業界の将来は、物理ベースの解析、機械学習や人工知能の形態であれ、リアルタイムシミュレーションにあると確信しています。そのためには、モデルやアルゴリズムの開発に必要な大量のデータが必要になりますが、SIMULIA Abaqus などのシミュレーション ソフトウェアの一貫した進歩の恩恵を受けることができます。

 

「シミュレーションが好きなのは、私たちの業界に革新をもたらすからです。より良い設計をすることは、患者さんや外科医のお客様にとってより良いことです。シミュレーションはより速く、リスクを軽減します。これは当然のことです。医療機器メーカーでシミュレーションを導入していないところはないでしょう。これは、業界全体が採用すべき素晴らしいツールだと思います」

 

Dassault Systèmes

Dassault Systèmes

3Dソフトウェア市場におけるパイオニアであり、3DとPLMソリューションのワールド・リーダーであるダッソー・システムズ(仏)の日本法人です。
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