航空宇宙・防衛March 5, 2021

【バーチャルでひも解く世界】7:有名な空中ネジのご紹介と、皆様作成の3Dモデルの募集

ダ・ヴィンチの手稿を3D環境で再現するプロジェクト「OPEN CODEX」から、空中ネジ、ヘリコプターの元祖となった手稿についてご紹介します。
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Avatar 小林 敦志 (Atsushi Kobayashi)

ダッソー・システムズで産業機械業界のコンサルタントをしております、小林 敦志です。この「バーチャルでひも解く世界」では、主に海外のプロジェクトや日々のニュースまたは当社ならではの情報を、私の目利きでお伝えしながら、日々変容する社会・製造・ITのトレンドを皆様に共有していきたいと思っています。

2回続きとなりますが、今回も15世紀ルネサンスの巨匠、レオナルド・ダ・ヴィンチの手稿を3D環境で再現するプロジェクト「OPEN CODEX」からご紹介します。

https://3dexperiencelab.3ds.com/en/projects/ideation/open-codex/

今回は、非常に有名な空中ネジ。ヘリコプターの元祖となった手稿です。

今までのビデオでご紹介したように、ダ・ヴィンチは空を飛ぶということに強い興味を持っていました。(前回のブログでご紹介した)木製の水道管を作る過程から想像するに、水流、言い換えると流体に関する知識、経験も蓄積されていたでしょう。ダ・ヴィンチの場合は、現在のような知識という言い方よりも、思索や、アインシュタインらが使う思考実験という言い方が適切かもしれません。

1481年頃には、スクリューを使用した水揚げ装置のスケッチを描いています。おそらく、流体の移動でのネジの動き、効果に知っており、その後、空気も流体として扱えることを知った上で、この「空中ネジ」を1489年頃に考え出したと思われます。

上部の帆布の羽根の部分は、半径8ブラッチャ、約4.6mと、かなり大きなものです。下段に4つの棒があるため、おそらく4名が搭乗し、ロープなどで支えられた軸部分を回転させる構造です。ダ・ヴィンチのメモには、帆布のネジを十分に速く回すと、空気を押して構造物が空中に舞い上がると記載があるそうですが、現代の私たちの目で見ると、動力的には、相当無理があるとわかります。それ以外にも、反回転の問題も見逃されています。飛行中に、生成したトルクが、ネジ部分だけでなく、基盤自体も回転させます。現代のヘリコプターのローターの部分に相当する機能が必要です。

ただ、ダ・ヴィンチもこれでOKと考えていたわけではなく、帆布部分は空気を通さないように表面にデンプンを塗ることや、紙で模型を作成して実験すること、などの記載がメモにあるそうです。

現在ですと、紙の模型でなく、バーチャルな環境で実験すれば良いですね。

羽根で水平に飛ぶのではなく、垂直に飛翔するという発想は、希有なものです。竹とんぼは紀元前の中国からあるそうですが、実際に回転翼が少しでも飛んだのは20世紀です。動力の問題は非常に大きく、ガスタービンのエンジンの登場まで実用化されていません。

ここで少しニュースがあります。

レオナルド・ダ・ヴィンチを描いたアニメーション映画が、Pixarで企画されているそうです。その名も”The Inventor”。その監督であるジム・カポビアンコさんと、弊社ダッソー・システムズの3DEXPERIENCE Labでは、ダ・ヴィンチの手稿の3Dモデルを募集しております。

LEONARDO DA VINCI 3D DESIGN CHALLENGE

簡単に紹介しますと、弊社のSOLIDWORKS, CATIA, もしくはxDesignを利用して、次の10種類のうち1つの手稿をモデル化してほしいとのこと。

1) 回転式大砲

2) アルキメデスのスクリュー

3) クレーン1つめ

4) スモークジャック(暖炉の上昇気流を使う装置ですね)

5) クレーン2つめ

6) 旋回橋

7) パドルボード

8) 車

9) 都市の一部(これは文献や周辺を読み込む必要ありますね)

10) メカニカルライオン

(気のせいかもしれませんが、やさしい順に並んでいるように見えます)

作成したモデルを弊社のコミュニティにモデルとともにPostするだけで応募が可能です。優秀な5名の方には、3Dプリンタでのモデルと、1年間のxDesignの利用権。そしてなによりも、映画のエンドクレジットに名前が載るとのことです。締め切りは4月15日。

単に作成するだけではなく、ダ・ヴィンチの頃の時代背景、目的、工学的考察などを加えてモデルを作成すると、作成自体も楽しく、自分の名前が載るかもしれないと思うと、挑戦する気持ちが湧いてくるのではないでしょうか?

海外の様々なトレンドを紹介する「バーチャルでひも解く世界」、いかがだったでしょうか。産業機械業界担当コンサルタントの小林でした。

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