ロッキード社前CEOが皮肉を込めて書いた「オーガスティンの法則」に果敢に取り組む最新のテクノロジー

ロッキード・マーティン社の前会長兼CEO、Norman R. Augustine氏が航空宇宙産業にはびこるさまざまな問題(実際には多くの業界に共通する問題でもある)を書き留めた象徴的な本を出版してから40年近くがたち、52の法則のうち少なくとも5つは、テクノロジーの着実な進展によって通用しなくなっています。

 

1980年代に入ると、航空宇宙関連企業はより高度なシステムを求めるようになりました。しかし、前進するにはそれなりの代償が必要でした。品質に関する問題が繰り返し発生し、企業はプロジェクトを予算の範囲内でスケジュールどおりに終わらせるのに苦労していました。

 

当時マーティン・マリエッタ社(米国の航空機メーカーの1社であり、1995年にロッキード社と合併してロッキード・マーティン社となる)の役員だったNorman R. Augustine氏はジェット戦闘機の生産コスト急上昇に見舞われたことをきっかけとし、皮肉を込めて航空宇宙分野で大規模開発計画をやりくりする難しさを52の金言にまとめました。この内容は1983年に『Augustine’s Laws(オーガスティンの法則)』として出版されました。

 

それから40年近く経過していますが、同氏は多くの法則が今でも説得力があると考えています。そんなことはないと思いたい反面、このとき書き留めたすべての問題をテクノロジーによって解決できると考えているわけでもありません。

 

時は流れ、当時書かれた法則の多くが今でも通用する一方で、最新のテクノロジーが解決に向けて積極果敢に取り組んでいる課題もあります。

 

通用しなくなっている法則

今日の最先端のソフトウェア・ソリューションのおかげで今は通用しなくなっていると思われる法則の一つが、15番目の法則、すなわち「コストの3分の1と問題の3分の2は、作業の最後の10%で発生する」です。航空宇宙分野の企業はこの難問を「最高のソリューション」の追求と呼び、コストはどうであれ究極のパフォーマンスを求めます。

 

Augustine氏が一連の法則を書いた当時は、「最高のソリューション」もつきなみなものでした。しかし今日の政府系企業は、手頃な価格で要件を十分に満たすことができる革新的なテクノロジーをひたすら追い求めています。こうしたパフォーマンスとコストの両立を実現するために、航空宇宙分野では多くの企業が、設計を最適化しながらコストもしっかり掌握できるように考慮された業務変革プラットフォームを導入しています。ジョージア工科大学のAerospace Systems Design Laboratory(ASDL)で上級研究技師を務めるSimon Briceno氏は、パフォーマンスとコストの両立を支援できる最新のデジタル・ソリューションを自身も活用し、高く評価しています。

 

「デザインごとに実機プロトタイプを作成してテストするこれまでのやり方では、コストと時間があまりにもかかり過ぎていました。私どもは無人航空機システムの設計や統合、テストに要する時間を短縮する方法を探していました。そして今は、設計や挙動をバーチャルな環境で作成・分析・テストしています」(Simon Briceno氏)。一般的には、マルチフィジックス・シミュレーションや複合領域解析シミュレーションを使用してバーチャルな環境でテストを実施することで、物理的なテストと比べるとテストや認証に要するコストを25%以上削減できます。時間についても、2週間かそれ以上かかる物理的なテストと比べると、バーチャルなテストは多くの場合30分もあれば終わります。

 

最優先事項

航空宇宙分野の企業に最優先事項の中でどれが一番対応しやすいか尋ねると、多くは「開発サイクルの短縮」と答えます。しかしこの目標は、オーガスティンの法則の24番、「確定したプロジェクトのスケジュールを伸ばすよりも高くつくのはそれを速めることだけであり、これは世に知られている最も高くつく行動である」に逆行します。

 

ただし、最新の優れたソフトウェア・ソリューションを使用している航空宇宙関連企業からすると、こうした折り合いをつける関係は変わりつつあるのかもしれません。たとえば、ブラジルに本社を置いて商用ビジネスジェットを生産しているエンブラエル社では、エンジニアリングやテクニカルサポート、製品サポートを担当するチームのおよそ4,000名に及ぶ社員が、構想から生産までをカバーする製品イノベーション・プラットフォームを利用しており、製造現場やプレ・デザイン、顧客サービスを担当する他の多くの社員も同様です。導入の動きは同社のサプライチェーンにも広がっています。

 

エンブラエル社のエンジニアリング & テクノロジー担当バイスプレジデント、Humberto Pereira氏は次のように語ります。「このプラットフォームを利用すると、部門間のコミュニケーションが改善され、煩雑な書類や無駄な中間手続きの一部が不要になるため、構想から生産に至るまで新製品の開発に要する時間を短縮できます」

 

データマイニング

オーガスティンの法則の35番には、歴史が証明する業界のもう一つの弱点、つまり「データを分析して効率性と品質を高めることができない」昔からの弱点が次のように書かれています。「結論を出すのに利用できるデータが乏しければ乏しいほど、信憑性を高めるためにデータの精度をより正確に判断しなければならない」

 

しかし今日の航空宇宙関連企業は、適切なデジタル・ソリューションを導入してビッグデータを活用する技量を高めており、数十年前にはできなかった方法で運用パフォーマンスを改善しています。ドイツのハンブルクに拠点を置くZAL – Center of Applied Aeronautical Researchの最高経営責任者、Roland Gerhards氏は次のように語ります。「一連のデジタルツールを統合して利用できるため、設計や生産のさまざまな問題に対応できます。ビッグデータが重要であり、デジタルツールから得られるすべての情報を正しく理解することも重要です」

 

確かに、今はデジタル・アプリケーションが生み出す大量の情報を適切に解釈できるようになっており、37番目の法則、すなわち「時間の90%は、考えていたよりも物事が悪い結果になる。残り10%については、それほど多くを望む権利がない」が通用しなくなっています。

 

作業の成果を予測

米国に本社を置く航空宇宙・防衛分野のテクノロジー企業、ノースロップ・グラマン社では、一連のデジタル・ソリューションを使用して管理者が早くから作業の成果を予測し、無駄な時間をなくすだけでなく、設計の問題点の発見が遅れることによる予算超過も回避しています。

 

ノースロップ・グラマン社の生産計画担当バイスプレジデント、David Tracy氏は次のように語ります。「私どもは高性能センサーや分析機能、IoT(モノのインターネット)ソリューションを導入しているため、当初から質の高い製品を作れるだけでなく、主な自動制御設備や業務システムからのデジタル情報を統合することで、他社の追随を許さない可視性を現場で実現し、どの工場でも先を見越した意思決定が可能です」

 

デジタル時代にできることと1980年代前半にできたことで明らかに違っているもう一つの例が、42番目の法則、すなわち「実機を使用したテストは際限なく行わなければならないため、現実的ではない」です。

 

物理的なテストには時間もコストもかかる一方、業務変革プラットフォームを使用しているエンジニアは、コンポーネントの無限の組み合わせをバーチャルな環境で迅速にテストすることができます。バーチャルなテストでは、エンジニアはどのデザインが最高のパフォーマンスを発揮するのか確認できるだけでなく、どのデザインを最もコストをかけずに生産・維持できるのかもわかります。

 

NASAのチーフ・テクノロジスト、David Miller氏は次のように語ります。「我々は現在、3Dモデルとテストが融合する地点にいます。疑いのある項目については、最近まで使うことができなかった一連の高度なデジタルツールを使用してこの両者の相互作用に着目します」

 

法則を無効にするソフトウェア・ソリューション

オーガスティンの法則が通用しなくなるようにするために、航空宇宙関連企業はダッソー・システムズのソフトウェア・アプリケーションを使用して以下のような成果を上げています。

• 法則15: 「コストの3分の1と問題の3分の2は、作業の最後の10%で発生する」。Airbus A350 XWBの計画では、エンジニアたちは2D図面の代わりに機能性に優れた3Dモデルを使用して電気配線設置定義の更新に要する時間を50%短縮しました。配線設置定義の引き渡しに関しては、品質不良によるやり直しを25%削減しました。

• 法則24: 「確定したプロジェクトのスケジュールを伸ばすよりも高くつくのはそれを速めることだけであり、これは世に知られている中で最も高くつく行動である」。SAFRAN Transmission Systems社は、設計変更のオプション管理タスクを改善して生産性を30%高めました。以前は、複雑さの度合いに応じて3ヵ月から1年半ほど要していました。

• 法則35: 「結論を出すのに利用できるデータが乏しければ乏しいほど、信憑性を高めるためにデータの精度をより正確に判断しなければならない」。15年前は、ダッソー・アビアシオン社が期限内に納品していた予備部品は全体の65%でした。現在は98.6%になりました。

• 法則42: 「実機を使用したテストは際限なく行わなければならないため、現実的ではない」。一般的には、マルチフィジックス・シミュレーションや複合領域解析シミュレーションを使用してバーチャルな環境でテストを実施することで、物理的なテストと比べるとテストや認証に要するコストを25%以上削減できます。2週間かそれ以上かかる物理的なテストと比べると、バーチャルなテストは多くの場合30分もあれば終わります。

by Tony Velocci

ダッソー・ システムズ

ダッソー・ システムズ

3Dソフトウェア市場におけるパイオニアであり、3DとPLMソリューションのワールド・リーダーであるダッソー・システムズ(仏)の日本法人です。
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