【スーパーチャージ】スーパーキャパシタはリチウムイオン電池に取って代われるか

リチウムイオン電池は携帯用電子機器市場に革命をもたらし、現在でも主に使われている充電池の種類です。しかし、その欠点(充電の限界とリサイクルの制約)から、研究者は代替品を追い求めています。スーパーキャパシタというエネルギー貯蔵デバイスの分野が未来に力を与えるものとしてかなり有望です。

 

テスラ社が2019年2月にMaxwell Technologies社という小さなウルトラキャパシタメーカーを2億1800万ドルで買収した際、この買収は一般的な報道機関ではあまり注目を浴びませんでした。しかし、エネルギー貯蔵の世界では、このニュースはテスラ社が電気自動車の電力源としてリチウムイオン(Li-ion)電池の先を見越している可能性があることを示唆するものとして、衝撃を持って受け止められました。

 

リチウムイオン電池は、ソニー社が1991年に商用化して以来、輝かしい時代を謳歌してきました。多くの研究者がリチウムイオン電池の時代を引き延ばそうと努力を続けていますが(「新たな需要を満たすため競ってリチウムイオンセルの改良を進める研究者たち」を参照)、リチウムイオン電池は特に輸送機関用途には厄介で、解決が難しいことがわかっている欠点に苦しんでいます。充電に数時間かかり、限られた回数しか充電できず、リサイクルに費用がかかり、時には発火することがあるのです。

 

「フラッシュライトやエネルギーハーベスタなどの高電力密度を必要とする用途では、スーパーキャパシタが必要になります」

LIWEI LIN氏
カリフォルニア大学バークレー校 機械工学科教授

 

スーパーキャパシタは、このような制約に悩まされることはありません。この広範な技術グループにはウルトラキャパシタ、疑似スーパーキャパシタ、ハイブリッドが含まれ、それぞれ構造は異なりますが、リチウムイオン電池よりも高速かつ安全にエネルギーを蓄積し放電できる新しい微細構造や素材などのナノテクノロジーの急速な進歩による恩恵を受けています。

 

「自宅や充電ステーションに十分大きな帯域の電力が来ていれば、自動車の充電には数時間ではなく数分しかかからない可能性があります」と、カリフォルニア州バークレーにあるバークレー研究所分子工場(Molecular Foundry)の科学者職員であるAdam Schwartzberg氏はスーパーキャパシタについて語ります。この飛躍的進歩で、電気自動車の普及の主な障害の1つである充電時間の長さが解消するでしょう。また、これがテスラ社がMaxwell Technologies社の買収に興味を示した理由なのかもしれません。

 

進化を遂げる

スーパーキャパシタは、正電荷と負電荷を絶縁体で区切られた異なるコンパートメントに蓄電します。エネルギーを化学的形態に変換してまた戻さなければいけないため徐々に減衰するバッテリーとは異なり、スーパーキャパシタはエネルギーを静電的に蓄えます。電力の吸収や放電を即座にできるので、スーパーキャパシタはほぼ無限に充電と放電のサイクルに耐えられます。

 

しかし、主な欠点はスーパーキャパシタの蓄積電力がリチウムイオン電池よりも早く消失することです。

 

「リチウムイオン電池を備えた車なら、駐車して数週間後に戻ってきてもまだ大丈夫です」と、Schwartzberg氏は言います。「しかし、スーパーキャパシタでは、戻ってきたら車のエンジンをかけられない可能性があります」

 

カリフォルニア大学バークレー校機械工学科教授のLiwei Lin氏は、解決のためにSchwartzberg氏と協力しています。その解決策を疑似スーパーキャパシタと呼んでいます。基板と呼ぶ切手サイズの金属片の上にカーボンナノチューブを垂直に高密度で積み重ねます。原子層堆積として知られる加工法を使って、窒化チタンで原子層1層ずつカーボンナノチューブを被膜し、酸素原子層と交互に入れ替えます。

 

この加工で理想的な導電体を作成します。別の切手サイズの金属片がキャパシタのブックエンドとしての役割を果たし、最終的には他のスーパーキャパシタの3倍の電力を放電でき、自己放電の可能性は低くなります。

 

商用化

スーパーキャパシタの可能性を追求している自動車会社はテスラ社だけではありません。ランボルギーニ社は、「テルツォ・ミッレニオ(Terzo Millennio)」スーパーカープロジェクトの一環としてマサチューセッツ工科大学(MIT:Massachusetts Institute of Technology)と一緒にスーパーキャパシタに取り組んでいます。このプロジェクトは、自動車の4輪それぞれにモーターを備えることを特徴としています。

 

「スーパーキャパシタを使って車の制動時にエネルギー蓄積を増やし、加速時に電力を急増させます」と、スーパーキャパシタを含むカスタム電力システムのヨーロッパ最大メーカーの1つでスウェーデンを拠点とするPowerbox社のマーケティング・コミュニケーション部門の責任者であるPatrick Le Fèvre氏は述べています。

 

この車は主電源としてリチウムイオン電池を使いますが、初期の試作品ではバッテリーがスーパーキャパシタと高度に統合されていました。この車はたくさんの炭素繊維で製造されているので、極めて軽量です。また、スーパーキャパシタを使って別々の車輪で動力を生み出すため、非常に高速になります。

 

Lin氏は、スーパーキャパシタには商業分野で多くの用途が見つかると確信しています。「スーパーキャパシタは多くの種類の電子機器の電池システムの一部として長年使われており、電池寿命を延ばし、システム全体の性能のバランスを保っています」と、Lin氏は言います。「フラッシュライトやエネルギーハーベスタなどの高電力密度を必要とする用途では、スーパーキャパシタが必要になります」

 

エネルギーハーベスタは、ブレーキ適用時にハイブリッド車や完全電気自動車(および、特定の非輸送分野)のエネルギーを回収し、システム全体のエネルギー効率を大幅に高める仕組みです。

 

「車が停止するときに、フライホイールによって余った機械動力を電力に変換できます」と、Lin氏は語ります。「その電力を蓄積するにはスーパーキャパシタが必要になります。バッテリーの電力密度はとても低いので、そのような大量のエネルギーをこれほど短い時間では回収できないからです」

 

その他の用途

しかし、スーパーキャパシタの商用的な可能性は、自動車以外にも大きく広がっています。

 

Le Fèvre氏は、インターネット配送の巨大企業(特にアマゾン社)がスーパーキャパシタを使って倉庫で使う何マイルものコンベアー管理を試みていると指摘します。コンベアーを動かすエンジンは、小さなリチウムイオン電池とスーパーキャパシタを備えたシステムに接続されています。

 

「コンベアーを停止するときには、スーパーキャパシタでエネルギーを回収します」と、Le Fèvre氏は言います。これにより、エネルギーを節約し、費用を削減します。

 

しかし、スーパーキャパシタの最大の用途はエネルギーのスマートグリッドになるとLe Fèvre氏は考えています。太陽光発電や風力発電でのサージ電圧のタイミングと強さについては予測できないため、スマートグリッドでサージ電圧に対処する必要はますます高まっています。

 

「グリッドを安定させる必要があります」と、Le Fèvre氏は語ります。「風力発電や太陽光発電がグリッドに接続されていると、多くの問題を引き起こします。サージ電圧を吸収する容量が必要であり、グリッドにひずみが生じないようにしなければいけません。そのために、ますますスーパーキャパシタを使うことになるでしょう」

 

スーパーキャパシタはリチウムイオン電池に完全に取って代わるでしょうか。特に電力損失の問題を解決するにはさらにかなり多くの研究が必要です。スーパーキャパシタはまだ初期段階なので、マーケットアナリストの間では潜在市場の大きささえ意見が一致していません。

 

しかし、スーパーキャパシタ研究に携わる人々は、ナノテクノロジーの急速な進歩で徐々にスーパーキャパシタが優位に立つと考えています。

 

「スーパーキャパシタの研究水準は本当に目覚ましく、(リチウムイオン電池との)差は縮まっています」と、Le Fèvre氏は語ります。「どれくらいすぐに実現するかはまだわかりませんが、申請特許数、発表論文数、産業界の関心の度合いを考えると、長くはかからないはずです」

 

スーパーキャパシタとは

キャパシタ(コンデンサ)は、化学的性質ではなく静電気を使ってエネルギーを蓄えます。2つ(以上)の伝導性金属プレートとその間の絶縁体(誘電体)で構成され、絶縁体で金属プレートが接触しないようにしています。電流がキャパシタに入ると、誘電体が電流を止めて電荷を蓄積します。電荷はプレート間の電場に蓄えられ、外部回路に接続すると放電されます。スーパーキャパシタには、プレート間に誘電体がありません。その代わりに、スーパーキャパシタには電解液とボール紙や紙などの細い絶縁体があります。電流が流れ込むと、イオンが二重層の電荷を形成します。高電圧では電解液が破壊されるので、スーパーキャパシタは低電圧に限られますが、非常に高い容量が得られます。

 

著者: William J. Holstein

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