【スマート道路】電気自動車が走りながら充電できるスマート道路が世界のエネルギー問題を解消する可能性

道路で車両の交通以上のことを行えるとしたらどうでしょうか。信号機、道路照明、看板やビルに電力を供給し、さらにはそこを走る電気自動車を充電できるとしたらどうでしょうか。世界のエネルギー需要が高まり続ける中、問題解決の選択肢の一つとして「スマート道路」が検討されるようになっています。

 

世界エネルギー会議は、世界のエネルギー需要が2050年までに倍増すると予測しています。この問題に対応するため、世界各地のイノベーターが最新の技術と材料を駆使し、既存のエネルギー源に対する負担を軽減する新しいエネルギー生成方法の開発を進めています。その中でも特に創造性に富む革新技術として、必要なときに必要な場所でエネルギーを取り込み、保存して、再分配する「スマート道路」が挙げられます。

 

頑丈なソーラー パネル(いわゆる「太陽電池」)で表面を覆った道路は、世界中で姿を現しつつあります。最初の試験道路は2016年にフランスのノルマンディーで開通しました。2017年12月には、世界初のソーラー パネル幹線道路が中国山東省の済南市で公共交通向けに開通しました。また、米国では、アイダホ州に拠点を置くスタートアップ企業のSolar Roadways社が、過去5年間で米国運輸省との契約3件に取り組んでおり、これにはアイダホ州サンドポイントにあるプロトタイプの駐車場が含まれます。

 

Solar Roadways社のガラス製ソーラー パネルは、1枚につき67ワットの電気を発生させ、このエネルギーを融雪発熱体やLED照明の道路標示の電力源として使用できます。また、パネルと車両の間の無線通信を円滑にするためにマイクロプロセッサも利用されています。Solar Roadways社では、あるパートナー企業と協力し、同社のソーラー パネル上を通過する電気自動車が走行中に充電できるようにする埋め込み技術の開発も進めています。

 

Solar Roadways社の共同創設者であるJulie Brusaw氏は、次のように述べています。「当社のパネルは、全米の複数の土木工学研究所で旧来の道路と同じ試験にかけられ、そのすべてにおいて優れた結果を出して合格しています。アメリカ本土の48州だけでも28,000平方マイル(72,520平方キロメートル)以上ある舗装面を当社のパネルで覆うことで、国の年間電力消費量の3倍以上を発電できることになります」

 

明るい未来?

しかし、ソーラー パネルで覆った道路の有効性に皆が納得しているわけではありません。悪天候や日陰、泥や土などによって太陽光の取り込みが阻害される可能性があります。大半のソーラー ファームのように角度を付けてパネルを設置するのではなく、平面にパネルを設置すると、パネルの効率性も制限されます。たとえば、ノルマンディーにある全長1キロメートル(0.6マイル)の道路は、2,800平方メートル(約30,000平方フィート)のソーラー パネルで覆われており、1日あたり800キロワット時を発生させると予想されていましたが、試験導入段階における実際の発電量はわずかその半分でした。

 

「[圧電結晶を道路に埋め込む]この技術は、再生可能資源からの発電量を2030年までに60%にするというカリフォルニア州の目標を達成する助けとなる可能性があります」

PRAB SETHI氏
カリフォルニア州エネルギー委員会シニア プロジェクト マネージャー

 

コストの問題もあります。ノルマンディーのソーラー道路は建設に500万ユーロ(560万米ドル)のコストがかかりました。米国道路交通建設者協会の調べによると、0.6マイルの標準的な二車線道路を米国で建設する費用は、平均で120万米ドルから180万米ドル(100万ユーロから160万ユーロ)です。これはソーラー道路の半分です。

 

オーストラリアのニューサウスウェールズ州に拠点を構える、エネルギー開発企業のCWP Renewables社で再生可能エネルギー エンジニアを務めるAndrew Thomson氏は、次のように述べています。「ソーラー道路が設計面ですばらしい成果をもたらしていることは確かです。しかし、標準的なソーラー ファームやその他の再生可能な代替エネルギーと比べると、電力系統に大きく貢献すると考えるのはナンセンスです」

 

「長距離にわたるソーラー道路を建設する作業は複雑で、また、数百個の接続ポイントが必要となるため膨大な費用がかかります。その意味で、大規模導入を実用的にするという、とてつもない課題が残っています。旧来のソーラー パネルでできた壁を道路脇や屋根、駐車場、野原に設置するほうがはるかに低コストで効果的です。このような導入はオーストラリアでますます増えており、2、3年後には、持て余すほどの発電量に達しているはずです」

 

道路から生まれる運動エネルギー

ただし、道路をスマートにする選択肢はソーラー パネル以外にもあります。道路上の車両の重量による圧力を電気エネルギーに変えることの実現可能性を経済面と技術面で調べるプロジェクトも進行中です。圧電結晶が路面に埋め込まれた道路を車両が走行すると、車輪から生じた力が結晶を変形させ、結晶から電気が発生するという概念です。

 

圧電システムはすでにまずまずの成功を収めています。2011年終盤には、オランダのハルデンベルグ近くの幹線道路でトゥヴェンテ大学とエンジニアリング企業のTauw社によって実施された試験導入において、路側センサーなどの低消費電力アプリケーションに電力を供給するのに十分な発電が確認されました。ただし、信号機や道路照明を点灯させるには足りませんでした。

 

英国ランカスター大学のエンジニア チームは、2011年のこの研究結果を生かし、より多くの電力を大規模環境で発生させる圧電システムの開発に取り組んでいます。

 

これと同じことを米国で行っているのが、州政府機関のカリフォルニア州エネルギー委員会(CEC)です。同委員会はこれまでに、ロサンゼルスに拠点を置く環境発電テクノロジー企業のPyro-E社とカリフォルニア大学マーセド校が主導する2つの独立系圧電プロジェクトに200万米ドル(約200万ユーロ)を投資しています。

 

CECでシニア プロジェクト マネージャーを務めるPrab Sethi氏は、次のように述べています。「両者によって構築された極めて高密度の圧電式発電システムは、圧縮荷重をかけて行ったラボ テストにおいて相当量の電力を出力することが確認されています。現在は、変換して得た電力を調節し、道路照明や非常電話への電力供給、バッテリーや電動自動車の充電、電力系統への給電に使えるようにする統合電源システムを製造しています。現場実証実験は、2019年末にかけて私道または大学が所有する道路で実施される予定です」

 

CECでは、試験導入の完了後、他の再生可能エネルギー源と比べた圧電システムの実現可能性を、電力出力、寿命、耐久性、コスト、マーケティングの可能性の点で評価することを予定しています。

 

Sethi氏は次のように述べています。「評価がうまくいったら、主要幹線道路でテストする前に、電力出力量の増加と設備投資の削減を同時に実現する方法を検証します。この技術は、再生可能資源からの発電量を2030年までに60%にするというカリフォルニア州の目標を達成する助けとなる可能性があります」

 

研究者たちは、この技術がカリフォルニア州の広大な道路システムの一部になる日が来たときのために、道路照明や非常電話への電力供給、バッテリーや電動自動車の充電、電力系統への給電にこの技術を役立てる構想を練っています。

 

ハイブリッド環境発電

一方、さまざまな技術の組み合わせから電力を発生させる研究も進められています。たとえば、テキサス大学サンアントニオ校では、太陽光で暖められた路面からの熱エネルギーと車両の振動を電力に変換する自己給電式ハイブリッド システムを開発しています。どのような路面の下にも埋め込めるように設計されたこのシステムは、国の電力系統から完全に独立して機能するため、遠く離れた辺境地域にエネルギーを供給する手段として最適です。研究者は、大学の敷地内の道路で実施した試験導入システムの結果が前途有望なものであると報告しています。

 

 

テキサス大学サンアントニオ校の土木・環境工学部のSamer Dessouky教授は、次のように述べています。「このシステムは交通量の多い温暖な気候のもとで正常に機能するよう最適化されており、熱エネルギーの変換によって29メガワット、圧電エネルギーの変換によって15メガワットの電力を継続的に発生できることがわかっています。これは、信号機や道路照明で使われている低電圧LEDや、交通量や道路の構造上の健全性に関するデータを収集するセンサーを作動させるのに十分な電力量です。これによって、道路の安全性を高め、維持費を削減できます

 

「将来のエネルギー需要を満たすには、道路のインフラと老朽化した電力系統をアップグレードする必要があります。当社では現在、この両方を実現する技術を開発しています」

JULIE BRUSAW氏
SOLAR ROADWAYS社 共同創設者

 

ただし、このシステムを商業用途に応用できる準備ができているわけではありません。

 

Dessouky氏は次のように述べています。「このシステムの発電容量は、既存のグリーン発電システム[ソーラー パネルなど]に匹敵するレベルに達していません。また、主要道路に当社のソリューションを設置することに伴う技術的な問題もまだ解決されていません。長期的な機能を最大限に活用するには、現場導入後のさらなる最適化が必要です。ただし、圧電式変換器や熱電式発電機、相変化材料などは、より効率的かつ大量に製造できるベンダーが増加しているため、価格の低下が進んでいます」

 

代替的な用途

また、電気自動車(EV)が走行中に充電できるようにする帯電・電磁誘導ソリューションの研究も進められています。たとえば、イスラエルに拠点を置くElectReon社では、走行中のEVの充電に使用する動的ワイヤレス電力伝送技術をテルアビブで試験導入しています。

 

ElectReon社の事業開発担当副社長であるNoam Ilan氏は、次のように述べています。「この電気は道路から生じるものではありませんが、EVに重いバッテリーを搭載したり、従来の充電ステーションに接続したりしなくても長時間走行できるという点で、再生可能エネルギーをEVに伝送する理想的な方法です。ルノー・日産製の電気自動車を使って実施したテストでは、当社の堅牢なシステムがさまざまな条件下で効率的かつ安定して電力を自動車に伝送できることを確認できました」

 

Ilan氏によると、テルアビブに拠点を置くDan Bus Company社との2019年の試験導入では、公共のバスでのこのシステムの実用可能性をテストする予定であり、ElectReon社は2020年中の完全な商用化を目指しています。

 

2030年までに化石燃料ゼロの交通インフラを実現することを目標としているスウェーデンは、革新的なプロジェクトをいくつか実行しています。2017年以降、ハイブリッド トラックは架線から電力を受けながらヒルスタとサンドビーケンの間の道路を走行できるようになっています。また2018年には、敷設した電力供給レールからEVに給電する世界初の道路が、首都ストックホルム近郊で開通しました。現地のコンソーシアムeRoadArlanda社によって開発されたこのシステムは、道路に埋め込まれた2本の電力供給レールで構成され、EVの底面に取り付けられた可動アームに走行中に電力を伝送する仕組みです。初回試験用の道路は全長2キロメートル(1.2マイル)ですが、2回目の試験では20~30キロメートル(12~19マイル)に延長されます。

 

また、ElectReon社は数社からなるコンソーシアムも主導し、スウェーデンのゴットランド島にある空港とビスビュー市を結ぶ4.1キロメートル(2.5マイル)の道路のうち1.6キロメートル(1マイル)で給電を行っています。この道路は電気トラックと電気バスの非接触給電にも対応する予定です。

 

自己発電型の道路

Roads that could produce their own electricity, rather than collecting it from

 

再生可能資源から電力を収集するのではなく自己発電できる道路は、究極の夢のような存在です。これらの道路はまだ実験段階にありますが、仮想化、シミュレーション、3Dモデリングなどの先端技術は、研究者がより高性能でコスト パフォーマンスに優れた材料を設計し、夢のような道路を現実に近づけることを可能にします。

 

eRoadArlanda社の発明家であり、研究開発マネージャーのGunnar Asplund氏は、この取り組みについて現実的な見方をしています。

 

Asplund氏は次のように述べています。「道路を自己発電型にすることはすばらしいアイデアです。しかし、スマート道路のほとんどは、非常に小規模の孤立した電力系統の一部でしかありません」

 

Solar Roadways社のBrusaw氏はこのことが有利に働くと考えています。

 

Brusaw氏は次のように述べています。「ソーラー ファームやウィンド ファームを新たに建設するには、そのための土地が必要となり、そこに生きる野生生物に悪影響を及ぼしますが、私たちの周りには数百万キロメートル分もの道路がすでにあるのです。集中型のソーラー ファームやウィンド ファームと異なり、太陽光などのエネルギーを利用するスマート道路は分散型電力系統を形成するため、サイバー攻撃の際に停止されることがなく、国の安全強化につながります。将来のエネルギー需要を満たすには、道路のインフラと老朽化した電力系統をアップグレードする必要があります。当社では現在、この両方を実現する技術を開発しています。」

著者: Rebecca Gibson

ダッソー・ システムズ

3Dソフトウェア市場におけるパイオニアであり、3DとPLMソリューションのワールド・リーダーであるダッソー・システムズ(仏)の日本法人です。
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