【連載:SIMULIAと学ぶ、身近なシミュレーション 】落雷や電磁波から建物を守る:電磁波シミュレーションの役割

バーチャルツインに不可欠の3つの要素は3Dモデリング、リアルタイムデータ、そしてシミュレーション。SIMULIAはダッソー・システムズのシミュレーション全般を担い、ありとあらゆる物理現象をバーチャル空間上に再現できます。この連載では、シミュレーションに何ができるのかを、身近なテーマを使ってご紹介します。

 

はじめに

Wi-Fiが5分切れるだけで、私たちがいかに「つながる」状態に慣れきっているのかわかります。現代のライフスタイルの殆どはデジタル接続とインフラに依存しているため、その接続を安定的に提供し、データを保存するデータセンターのような建物を、意図的でない電磁波(EM)から保護することは極めて重要です。

 

落雷

雷は遠くで見ている分には美しいものですが、雷雨の中ゴルフコースに出ない方が良いことは誰もが知っています。では、雷とはどのようなもので、デジタルシステムにどのような影響を及ぼすのでしょうか。

雷は、嵐雲中の水や氷の粒子に電荷が蓄積され、電気の力が十分に高くなり、プラス電荷とマイナス電荷が引き合い放電したものです。この電離した空気の領域では、ステップリーダー(先駆放電)と呼ばれる、地球に向かって枝分かれするステップ状の一連の電荷が発生します。ステップリーダーが地上に近づくと、反対方向に帯電したストリーマー(お迎え放電)が上昇し、雲と地上の間に導電路が形成されます。この形成された導電路にパルス状の電流が流れることで雲から放電され、これが稲妻の閃光となります。このリターンストローク(帰還雷撃)は、ピーク時に数万から数十万アンペアにも達し、非常に高温(最大3万℃、太陽の5倍!)になるため、周囲の空気が急速に膨張し、雷鳴として聞こえる衝撃波を発生させます。

 

建物は、特に高さがあり、構造体の一部である金属が電気伝導性に優れているため、低抵抗の経路を提供することになります。この場合、建物は落雷の経路の一部となり、強烈なリターンストローク電流に直接さらされることになります。雷の電流パルスは、大きな加熱を引き起こすのに十分なエネルギーを含んでおり、構造物の損傷につながる可能性があります。電流に伴う高強度磁場は、ケーブル配線や電気/電子システムに有害な電流や電圧を誘導し、IC やストレージ・デバイスなどの高感度電子部品の破壊を引き起こす可能性があります。また、磁場が重要なインフラを傷つけるのに十分なレベルである可能性があるため、近くでの間接的な落雷も懸念事項です。

 

 

電磁パルス(EMP)

EMPは多くのアクション映画の筋書きで、電気・電子システムに損傷を与える兵器としても扱われています。さて、EMPがビルや都市のデジタル・インフラを一掃する威力を持つという考えは、どの程度正確なのでしょうか。EMPは、自然現象としても、人間の活動の結果としても起こりうる現象です。 自然現象としては、太陽コロナから放出されるプラズマとその磁場によって引き起こされる太陽電磁パルスがあります。人工的に発生するEMPの例としては、核爆発の結果、粒子が地球の大気や磁場と相互作用することによって発生するパルス(NEMP)があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

EMPは、ピーク電界レベルが1mあたり数万ボルトの高強度電磁波を発生させます。この電磁波が建物に到達すると、窓などの開口部、ドアの継ぎ目、換気口、配管、ケーブルなどを介して結合し、建物内に侵入します。建物内に侵入した電磁波は、電子機器と結合し、電圧と電流を発生させ、高精度の電子機器に深刻な損傷を与えたり、焼損させたり、保存データを破壊する可能性があります。

 

 

デジタルインフラストラクチャーの保護

雷保護には、高感度システムから電流を逸らすことが含まれます。例えば、エアターミナルや避雷針は、雷を制御された場所に集め、安全に地面まで導く遮断ポイントとして機能することがあります。

Lightning strike on a Datacenter – 200 kA Lightning Current Pulse

 

シールドは、低周波磁界が建材を通して拡散するのを防ぐために使用され、ケーブルにも適用されることがあります。EMP対策としては、EMPが発生する波長よりも開口部を小さくして結合・透過を抑え、データセンターなどではシールドを施して保護区域を作ることが一般的です。また、窓ガラスに導電性コーティングを施し、ガラスを通過する電界を減衰させることも可能です。

フィルタリングと過渡保護デバイスは、コネクターインターフェースの電圧と電流を減衰またはクランプするために使用することができます。これらは、ケーブルシステムを建物に引き込むポイントオブエントリー(POE)で適用することができます。配管に設置された金属製のメッシュ構造は、電磁波をフィルタリングし、建物内への侵入を防ぎます。

 

 

シミュレーションの活用方法

では建物を保護するために、シミュレーションはどのような形で役立つでしょうか。たとえば物理ベースのシミュレーションを行うことにより、建物を新たに建造したり、既存の建物をアップグレードする前に、デジタル・インフラ設計上の雷/EMPへの脆弱性を評価し、電磁波の影響に対する防御力を強化することができます。また、さまざまな保護スキームを解析し、その有効性を評価することができます。さらに、パラメトリックスイープとオプティマイザを使用して設計のトレードオフを検討し、過剰なエンジニアリングを回避することで、建築資材のコストを削減することができます。

 

物理学に基づく複合的なシミュレーションを行うことで、電磁波対策のために実装した設計機能が構造的な完全性や冷却システムの性能を損なわないようすることや、逆に性能を低下させないようにしたりすることもできます。例えば、冷却システムの一部として建物内に配置された金属製の配管やダクトは、電磁界や電流を建物内に運ぶ導体として機能する可能性があり、電磁共振効果によって電磁界を増強させ、損傷を与える可能性さえあります。

 

バーチャルツインを使用した今日の最新シミュレーション技術は、すべてのエンジニアがシステム全体を完全に理解することで、イノベーションのためのまったく新しい道を切り開くことができるのです。SIMULIAのCST Studio Suite テクノロジーによるシミュレーションでは、磁界と結合経路を可視化することができるため、建物の電磁気的性能について大きな洞察を得ることができ、最適な設計と保護につながります。3DEXPERIENCE プラットフォームを通じて SIMULIA EM シミュレーション テクノロジーにアクセスすることで、すべての関係者が最新のデータを使用して、設計からシミュレーション、製造まで継続的に作業を行うことができます。

 

ダッソー・ システムズ

ダッソー・ システムズ

3Dソフトウェア市場におけるパイオニアであり、3DとPLMソリューションのワールド・リーダーであるDassault Systèmes(仏)の日本法人です。
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