【食の安全】新たな保健規制により、データ・インテグリティが安全な食料供給の基礎に

2011年、米国において1938年以来初となる大規模な食品安全規制「米国食品安全強化法(FSMA)」がバラク・オバマ元大統領によって署名されました。Compassでは、食品・医薬品業界を専門とするアナリスト企業であるAxendia社のDaniel R. Matlis社長にインタビューを実施。米国食品医薬品局(FDA)が同法の目標である安全な食料供給を実現するために、なぜ、どのように食品業界のデータに頼っているのか、そして、世界中の食品企業がどのような影響を受けることになるのかについて伺いました。

 

ー米国食品安全強化法(FSMA)の目標とは何でしょうか。また、他国の規制当局も同じ方向へ進んでいるのでしょうか。

 

Daniel R. Matlis氏(以下Matlis氏):FSMAにより、FDAは食の安全の焦点を事後対応型のプロセス、つまり、食品を原因とする病気が発生した後で政府がその原因を突き止めようとすることから、汚染された危険な食品がそもそも市場に出回らないようにすることへと移行させました。同法は、米国に輸入される全ての食品にも適用されます。したがって、米国外の食品生産者もコンプライアンスを確保しなければなりません。

 

意外かもしれませんが、FDAが同法の目標を達成するために頼っているのは、食品生産・加工業者による物理的な検査だけではありません。食品がサプライチェーンを移動する過程であらゆる生産者、輸送業者、加工業者によって収集されるデータも、汚染源を特定・排除する目的で利用されています。

 

ー小規模農家を除く全対象業者について、FSMAの適用期限は過ぎました。では、このような新たなデータ収集要件を満たすために、食品企業はどのような手順を踏んだのでしょうか。

 

Matlis氏:残念ながら、ほとんどの企業は依然として、コンプライアンスと記録管理を営業費用の1つと捉えているため、使う人員や時間、スプレッドシート、書類を増やすことによってそれらの要件を満たそうとしています。このようなやり方は、実質的なコストを増加させ、生産性を低下させるのが現実です。それどころか、この規制によって埋めようとした穴を特定し、リスクに対処するためにはほとんど役に立ちません。したがって、フードチェーンの安全性は以前に比べてそれほど向上していない可能性があります。

 

ー企業はどのように対応すべきなのでしょうか。

 

Matlis氏:信頼性あるデータは、適切な意思決定と適切な科学の基礎です。製品の質も、安全性も、効果もみな、製品ライフサイクル全体を通じて生じる大量のデータに依存しています。

 

しかし、FDAが求める可視性を実現するために、十分に詳細で脈絡のある適切なデータを報告しようとしても、手作業では無理があります。その結果、リスクとハザードの状況が完全には把握できず、ひいては脆弱性の認識も、十分な情報に基づく意思決定もなされずに終わるのです。

 

FDAは、企業がデータ・インテグリティ(データの完全性)に関して抱えているさまざまな問題に言及しています。具体的には、記録を裏付ける生データの不足、記録の不正確性と非網羅性、出荷時に使用されるバッチ検査結果の使い回し、過去の日付の使用、データの偽造、データの破棄です。これらはいずれも、手作業による紙ベースの報告に付き物の問題です。なぜなら、そのような方式はセキュリティが甘く、データの履歴が残らないからです。

 

ー企業はコンピューター・システムの増強に投資する必要があるのでしょうか。

 

Matlis氏:いいえ、システムを増強することは解決策とは言えません。本当に難しいのは、連動させることを意図して設計されているわけではない複数のシステムを横断してデータを管理することです。報告用のデータを手作業で集めるために奔走しなければならない背景には、そのような事情があります。

 

企業が必要としているのはむしろ、データ・インテグリティを終始一貫して保証するプラットフォームです。デジタルな連続性とインテグリティを実現し、法定報告を簡素で有益かつ実用的なものにするためには、それ以外に方法はありません。

 

ーデジタルな連続性を実現するために、なぜプラットフォームが必要なのでしょうか。

 

Matlis氏:プラットフォーム・アプローチは、データやアプリケーション、プロセス、人を組織全体で、また外部のパートナーとの間で一元化します。データを消費するアプリケーションは全て、ビジネス、製造、調査研究、品質管理のいずれの領域で使用されるかを問わず、単一の信頼できる情報源からデータを引き出します。その結果、バリューチェーン全体のユーザーは、科学的で質の高いプロセスデータを、そのインテグリティに全幅の信頼を置いて、入手、整理、分析、共有できるようになります。プラットフォームによって実現されるデジタルな連続性は、データの利用を可能にすると同時に、そのデータの改ざん不可能性、網羅性、有用性、脈絡性を確かなものにするのです。

 

ー企業は法規制コンプライアンスを目的としたプラットフォームのコストをどう正当化すればいいのでしょうか。

 

Matlis氏:この件に関する明るい材料は、プラットフォームによって実現されるデータのインテグリティと一貫性は法規制コンプライアンス以外にも役立つということです。現に、データのインテグリティと一貫性は、全体的な質の高さを確保し、イノベーションを加速させ、製品開発サイクルを短縮し、新製品投入のスピードを高めるための鍵となっています。

 

完全に統合されたプラットフォームは、調査研究、設計、品質管理、製造、販売後の全領域にわたって可視性を支えることにより、コラボレーション、意思決定、イノベーションを可能にします。コンプライアンスを支援するだけのプラットフォームに投資する気は起きないかもしれませんが、ビジネスの成長と改善をもたらすプラットフォームへの投資は正当化できるはずです。

 

ーでは、プラットフォーム・アプローチへ移行する企業は増えるとお考えですか。

 

Matlis氏:生き残りを望む企業にとって、移行するか否かの選択肢はありません。問題は、いつ移行するかだけです。スタンドアロン型のソリューションは、分断された島々のようなデータを生み出すことで、可視性や高品質、コンプライアンスの実現を妨げ、コストを増加させ、データ主導の意思決定を困難にしたり、不可能にしたりしてきました。そろそろビジネス全体を、品質と安全性を向上させるという何よりも重要な目標を持った1つの統合されたシステムとして捉える時期です。

 

それを実行する企業は、市場の勝者となることでしょう。なぜなら、安全な食料供給を支えることによって、規制当局からも消費者からも信頼を得るからです。

 

プロフィール

Daniel R. Matlis氏は、アナリスト企業であるAxendia社の創業者兼社長です。同社は、保健科学バリューチェーン全体のビジネス、テクノロジー、規制上の問題に関して、企業経営幹部と規制当局を対象にアドバイザリーを提供しています。

 

Matlis氏は、ジョンソン・エンド・ジョンソン社でキャリアをスタートさせ、同社在籍時にはテクノロジーと法規制コンプライアンスを専門としていました。Axendia社を設立する前は、ライフサイエンス専門の一流コンサルティング会社で、パートナー、バイス・プレジデント兼ゼネラル・マネジャーも経験。ポリテクニック大学(現ニューヨーク大学工学部)で電気工学の学士号、ニュージャージー工科大学で経営学の修士号を取得しています。

著者: Bernadette Hearne

ダッソー・ システムズ

3Dソフトウェア市場におけるパイオニアであり、3DとPLMソリューションのワールド・リーダーであるダッソー・システムズ(仏)の日本法人です。
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