自動車開発サイクルを短縮し、オンタイムでの製品開発を実現!MBSEの可能性

自動車メーカーやサプライヤーは、複雑な自動車をより短期間で開発するため、機械、電気、ソフトウエア領域を連携させるモデルベース・システムズ・エンジニアリング(MBSE)という先進的なアプローチを採用しています。専門家はプロジェクト単位でMBSEを導入し、徐々に知見の再利用を積み重ね、最終的に組織全体を統合する進め方を推奨しています。

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最近の研究結果によると、MBSEプラットフォームを使って、全ての部門とシステムを連携させているメーカーは、従来の設計・製造アプローチに依存するメーカーに比べて、より短期間で、コスト効率良く新車の開発が出来ることが明らかになりました。

 

アメリカのシステム・モデリングおよびシミュレーション・コンサルタント企業であるエス エム エス シンクタンク社(SMS ThinkTank)のCEOを務めるエド・ラジンスキ―氏は、「当社の調査では、MBSEを導入した業績上位2割の企業のうち、91%が製品提供日を守り、開発期間を9%短縮することができました。MBSEの導入に遅れている企業は、製品提供日に間に合ったのはわずか44%にとどまり、開発サイクルが8%増加しています」と説明します。

 

従来の自動車のエンジニアリングは、車両、パワートレイン1、主要なサブシステムをそれぞれ独立したチームが開発した後に全てを統合する逐次的かつドキュメント主導のアプローチであり、加速化・複雑化する次世代自動車の開発サイクルに対応できません。一方、MBSEを重視する自動車メーカーは、バーチャルツインを活用して自動車を開発します。デジタル3Dモデルにより、完全に統合された自動車そのものとしての評価はもちろん、現実の運転状況を再現できるバーチャル環境の中で、様々な動作条件に基づいて評価することができます。バーチャル環境下では、全ての部分の相互接続が最初の段階から定義づけられ、各システムが、設計プロセスとその延長線上でシームレスに統合されるため、様々な異なる動作条件でも当初の想定通りに機能します。

 

「MBSEは、一貫性のあるデジタル化されたシステムモデルの開発に焦点を当てます。要件・設計・解析・検証の情報で構成され、モデルを中心に据えるアプローチです。この場合の『モデル』は開発チームのマスターデータであり、システムエンジニアリングの活動から作成される重要な成果物でもあります。ドキュメントはシステムモデルから自動生成される二次的なものとなります」と、アクセンチュア社インダストリーX.0、エンジニアリング/PLMおよびスマートファクトリープラクティスのマネージング・ディレクターを務めるティノ・クルーガー氏は語ります。

 

MBSEのアプローチによりメーカーは、時間短縮やコスト削減のみならず、エラーを最小限に抑え、継続的にパフォーマンスを向上させることができます。

 

「このような全体的な考え方を採ることで、ROIの収支という視点からはではまっさきに見落とされがちなメリット(が顕在化すること)を考えてみてください。例えば、リスクは抑えられ、本来不要な修正作業も減り、顧客からの苦情も減り、代わりにあらゆる意思決定に有効な洞察が得られます。これは自動車業界が変化への対応能力を改善し、革新性を高め、顧客の期待を上回る製品を提供するためのまたとない機会です」とラジンスキー氏は語っています。

 

MBSE導入がもたらす効果

独ボッシュのモビリティ ソリューションズ事業セクターのボッシュ・カーマルチメディア部門は、先進的な車載インフォテインメント(情報と娯楽)とナビゲーションシステムを開発しています。MBSEアプローチを用いて全領域を単一のプラットフォームで連携させ、プロセスの再設計を行う前は、重要な情報が失われ、後工程においてコストがかかる製品変更を余儀なくされていました。

 

こうした問題に対処するため、ボッシュ・カーマルチメディア部門は標準の枠組とビジネスイノベーション・プラットフォームを導入し、MBSEに基づくプロセスを体系化し、各組織が理解できる視覚的な言語を用いて専門チームを連携させました。従来は、物理的なプロトタイプに頼って設計ミスを検出していた同社は、現在では統合された3Dモデルを開発しています。その結果、全てのソフトウエア/機械工学/ハードウエア設計者がバーチャルな環境で同時に設計、テストをし、初期段階で製品性能の評価が出来るようになりました。

 

同部門でカスタマープログラム担当ディレクターを務めるマーティン・シュミット氏は、次のように述べています。「モデルベースのアプローチでは、開発初期段階においてすべての公差(基準値と許容される差の最大値と最小値の差)を考慮しながら、コンセプトとその弱点を迅速に分析することでシステムを正しく解釈できます。例えば、キネマティクス シミュレーションと動作モデリングを通じて、閉塞検知アルゴリズムの設計を適応させることができました」

 

MBSEが(製造過程における)全体的な変革を実現するための重要なツールだと認識するメーカーが増える中で、前述のラジンスキー氏は、MBSEを目的ではなく過程として考えることを推奨しています。

 

「(MBSE導入の道のりを)ギャップ分析から始め、目標に対する現状を把握した上で、短期、中期、長期目標を設定します。その後、変更実行に関わる全部門を教育することに重点を置きます。MBSEは製品ではなく、製品ライフサイクル全体における考え方であり、一晩で導入できるものでもなく、リーダーシップ、リソース、忍耐を必要とします」

 

MBSEの変更管理を効果的に行うには、MBSEのプロセス、企業構造、企業文化に与える広範な影響を考慮し、関係者全員に参画してもらう必要があります。「MBSEは従来のIT領域に適用され、意思決定プロセスに取り込むことも可能です。意思決定者は開始にあたり、MBSEの適切な範囲の設定を求められます」とクルーガー氏は語ります。

 

企業は次第に、戦略レベルにおいて、より自然にMBSEを実践するようになり、開発者、デザイナー、エンジニアの仕事環境にMBSEを組み込むようになります。クルーガー氏は、次のように述べます。

 

「モデル中心のアプローチにより、意思疎通が改善され、製品やサービスの複雑化に対応し、設計・開発段階におけるリスクを軽減することが出来ます。より複雑になる製品の機能的な依存関係が透過的に示され、顧客のニーズが反映された高機能製品へと変換されていきます」

 

 

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本記事はダッソー・システムズのCompass magazine(オンライン)からの抄訳です。オリジナル記事(英文)はこちら

 

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3Dソフトウェア市場におけるパイオニアであり、3DとPLMソリューションのワールド・リーダーであるダッソー・システムズ(仏)の日本法人です。
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