コロナで変わるインターンシップの在り方。バーチャル・ラーニングを通じて実践的な経験を提供

教授や企業が学生と直接対面で会うことができない状況下では、インターンシップの機会はどのようにして提供されるべきでしょうか。新型コロナウイルスの感染拡大以来、教育関係者や企業は、インターンシップの在り方の再考を迫られています。本稿では、バーチャル・ラーニングの活用により見えてくる解決の糸口や、オンライン授業の裏で指摘される問題など、今日浮き彫りになる新たな課題について考えます。

(Image © AdobeStock)

 

 

必要性によって生み出された「バーチャル・インターンシップ」

学生が履修する科目の中には、座学中心の科目もありますが、実験室での作業など実践的な学習を中心とする科目もあります。また、職業体験を積む場であるインターンシップでは、特に実践的な経験が重要視されており、それをどのように提供できるかが問われています。

 

この課題に対応するために、大学やその他の教育関連団体では、3D製品モデルや人工知能を含むバーチャル・テクノロジーを活用した「バーチャル・インターンシップ」を実施しています。この新しいインターンシップでは、バーチャル・テクノロジーを活用することで、社会で実用化済みのプロセスや世界市場で成長しているアプリケーションを学生が直に体験でき、インターンシップの価値を飛躍的に高められる、と教育関係者は声を揃えて言います。

 

このような動きに先駆けて、エンジニアリング教育促進に関わる国際団体「グローバル・エンジニアリング・ディーンズ・カウンシル(GEDC)」と欧州工学教育協会は2020年5月に、「グローバル・バーチャル・インターンシップ・プログラム」を共同で立ち上げました。このプログラムは、GEDCの法人会員や学内会員が対象となっており、学生にリモート環境からオンライン上のプログラムを幅広く利用できる機会を提供することが目的です。

 

GEDCの議長であり、アラブ首長国連邦のアメリカン大学シャルジャ校工学部の学部長を務めるSirin Tekinay氏は「人々は徐々にバーチャルでの実施手法に順応しており、私達が意識を変えれば、オンライン授業やテクノロジーの活用には従来の学習方法以上に利点があることが分かりました。インターンシップのような実践的な経験学習の機会にも、同様のアプローチが可能とも言えるでしょう。当校のバイオメディカル・エンジニアリング・ラボの従来のインターンシップでは、経済的・時間的な問題により、このようなインターンシップを実現できなかったと思います。バーチャル・インターンシップは、世界中の工学部の学生に新たな機会を提供し、学生が国際社会への関わりを意識するきっかけを与えてくれたのです」

 

アメリカン大学シャルジャ校の学生の中には、米国やインド、チリにいながらバーチャル・インターンシップに参加した学生もいます。このインターンシップでは、学生は研究テーマに取り組み、プレゼンテーションの作成や実験を行いました。参加した学生は、徐々に役割を明確にし、価値のあるプロジェクトを遂行することができ、これに対してTekinay氏は、「このようなインターンシップの形式はすでに定着しており、従来の形式以上の価値を創出できる」と述べています。

 

その一方でフランスの工学部学生の利益を代弁する団体「Bureau Nationale des Élèves Ingénieurs」の代表であり、現役の学生でもあるJulien Doche氏は、「必ずしも常にオンライン学習を実施するという発想ではない」と指摘し、「教育の発展、社会や経済的事象への適応などのバランスをうまく取り、高等教育の質を維持することが目標である」と語っています。

 

破壊的イノベーションのコスト

一方、効率的なバーチャル・ラーニングが実現できた場合でも、コスト面での課題が残っています。米国の教育研究機関であるNicheが行った最近の調査によると、回答した学生の79%は、従来の対面授業と比較して、バーチャル授業、あるいは(バーチャルと対面を組み合わせた)ハイブリッド型授業のほうが、コマ数も少なくキャンパスでのやりとりもほぼ皆無であることから、提供側のコストは安くなるだろう、と考えていることが分かりました。

 

これに対して米オハイオ州立大学にてエンジニアリング教育に携わる准教授のJulie Martin氏は、「講義にかかる費用はバーチャル授業となった場合でも安くはありません。むしろ、職員は、オンライン講義に合わせて講義内容を再調整する必要があるため、対面授業よりも長い時間働いています。また、新型コロナウイルスの拡大により、大学は大幅な予算削減に直面しており、教員を解雇している機関は、残っている教員に通常より多くの授業数をこなすように求めています」と解説しています。

 

しかし、バーチャル授業やその授業料に対する考え方は国や地域によって異なります。前述のJulien Doche氏は、「フランスでは工学系の学校の多くは公立であり、年間授業料は約600ユーロ(725ドル)です。他の教育機関や他国の事情と比較するとそこまで高くはないため、フランスでは多くの工学部学生が満足して授業料を払い続けています。しかし、授業料がもっと高額だった場合、考え方もかなり違っていたかもしれません」と述べています。

 

高等教育の授業料は、常に意見が大きく分かれるテーマです。しかし、バーチャル・インターンシップでは学生は事務的な作業を行なう以上に、グローバルなチームの一員として一翼を担えるための実践的な経験を身に付けられる場となっており、その価値は既に証明されています。教育関係者がバーチャル・ラーニングの価値をさらに高める方法を見つけ、高度なエンジニアリング技術やグローバルなチームでの作業を学生に体験させることができれば、バーチャル・ラーニングへのコストに対する意識も変化するかもしれません。

 

最後に、ダッソー・システムズ株式会社が2020年9月~11月に実施した「Virtual Hackathon 2020」の動画を紹介します。ここでは、学生はバーチャル・プロジェクトに3ヶ月間参加し、プロジェクトの発表を対面式で行いました。

 

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本記事はダッソー・システムズのCompass magazine(オンライン)からの抄訳です。オリジナル記事(英文)はこちら

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3Dソフトウェア市場におけるパイオニアであり、3DとPLMソリューションのワールド・リーダーであるダッソー・システムズ(仏)の日本法人です。
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