【フォーカスのシフト】自動車メーカーはモビリティ エクスペリエンスの提供者になるべく、フォーカスをシフトしています

自動車メーカーが直面しているのは、多くの人々が車を所有するよりも、オンデマンドモビリティを選択する未来です。専門家は製品の美しさや、機能を越え、長期的な顧客満足とロイヤリティを育成する、意味のある顧客エクスペリエンスに注目すべきである、と忠告します。

 

2018年のロサンゼルス・オートショーでボルボ社のスタンドを訪れた来場客は、このスウェーデンの高級車ブランドによる、最新モデルの展示を期待していたかもしれません。ところが、自動車の代わりに、以下のような掲示があるだけです。

 

「こちらは自動車ではありません」世界でもメジャーな自動車マーケティング プラットフォームの一つで、ボルボ社は、自動車ではなく、カスタマー・エクスペリエンスを宣伝することを決めたのです。

 

この大胆な動きは、今やお客様にとって重要なのは物理的な自動車そのものより自動車ブランドをどう体験できるかであるという、ボルボ社の信念を反映しています。さらにボルボ社は、オンライン ショッピングを自動車のトランクに配達するアプリケーションや、さらに、友達や家族に物理的に鍵を手渡すことなく車にアクセス、利用できるようになるオプションを含む、新しいコネクティビティ・サービスを提示しました。

 

ボルボ・カーズ社のチーフエグゼクティブ、Håkan Samuelsson氏は、プレスリリースで次のように述べています。「われわれの業界は変化しています。ただ自動車を製作・販売するのではなく、個人個人に向けた、持続可能で、安全な方法で移動する自由をお客様に提供していきます」

 

デジタル世代への訴求

グローバルリサーチ会社、McKinsey社は、2025年、自動車を購入する可能性のある人口集団の45%を、現在20代から30代のミレニアル世代が占めるようになると想定しています。

 

McKinsey社の代表、Harald Fanderl氏は次のように述べています。「お客様は、高度なエクスペリエンス、特にデジタル空間でのエクスペリエンスに慣れ親しんでおり、自動車のような従来の領域にも同様なエクスペリエンスを期待しています。
これは、お客様のニーズではなく、自動車のニーズを中心に組織されていた販売代理店の従来のやり方に対する挑戦です」

 

これにより、自動車メーカーは美しさや性能よりも、さらにはるか先に焦点をあてる必要に迫られています。

 

米国に拠点を置く管理コンサルタント、Deloitte社のGlobal Automotive Research Leader、Ryan Robinson氏は、次のように述べています。「特に、スポーツ・ユーティリティ・ビークル(SUV)などの大衆向けマスマーケット車両グループがこのケースにあたり、現在、モデルのデザインは類似の外観のテンプレート(高い車高、ハッチバックのトランク、リアの傾斜)に従う傾向にあります。

 

世界的に、自動車の外観が相対的に類似していくとすると、メーカーは、新しい差別化要因を把握する必要があります。多くの場合、エクスペリエンスがそれを担います。」

 

第一印象が重要

自動車を選ぶときに、消費者は、価値と利便性を求めます。消費者の購入の決定に、ブランドが影響を与える時間はあまりありません。Deloitte社の「2018 Global Automotive Consumer Study」によると、米国消費者の3分の1は、自動車の購入を検討してから1か月以内に購入を決めています。

 

 

ドイツの自動車メーカー、BMW社の広報担当者は次のように述べています。「人目を引き、印象を残すには、エクスペリエンスを提供する必要があります。車そのものと同じくらい、車が提供するエクスペリエンスが重視されます」

 

BMW社は、オンライン、オフラインの購入体験をシームレスに連携させるステップを構築しています。お客様の家庭からオンラインで、または、ディーラーにあるVirtual Product Presenterを使用して、自動車のバリアント、オプション選択を画面上で実施できます。
さらに、同社が導入した、BMW Connectedアプリケーションの「My Car is Born」フィーチャーによりお客様は自分の新車が製造される過程を追跡できます。

 

真のコネクテッド・オーナーシップ・ジャーニー

Deloitte社のRobinson氏は次のように述べています。
「できるだけスムーズで楽しい購入過程を創り出すことに投資するブランドは、将来の売り上げや収益の流れを作りだすのに優位な立ち位置にいます。

 

人々に気持ちよく意思決定をしてもらい、できるだけスムーズかつ効率的なステップを踏んで、生涯にわたる関係を構築する基盤を築くのです」

 

“「世界的に、自動車の外観が相対的に類似していくとすると、メーカーは、新しい差別化要因を把握する必要があります。多くの場合、エクスペリエンスがそれを担います。”

RYAN ROBINSON氏
DELOITTE社 GLOBAL AUTOMOTIVE RESEARCH LEADER

 

フランスに拠点をおく、エクスペリエンス・ソフトウェア・プロバイダー、epicnpoc社の共同創設者でありExperience Designリード、Guillaume Becourt氏は、全体的なバリューチェーンを横断するカスタマー・エクスペリエンスを中心に、自動車企業と提携しています。

 

Becourt氏は言います。「感情面でのインタラクションは、今や物理的な製品の範囲を越えています。それが、サービス、入退フェーズ、ユーザーフィードバックを含む、すべての側面を考慮するエクスペリエンスを開発しなければならない理由です。製品は包括的なシステムの一部になるのです」

 

問題が起きた場合でも、カスタマー・エクスペリエンスの全体像が見えていれば、状況をうまく立て直すことができます。

 

McKinsey社のFanderl氏は、次のように述べています。「お客様の要望に対してエンド ツー エンドのオーナーシップを明確にすることが重要です。プレーヤーは、従業員にディズニー式マインドセット(自分のミスでなかったとしても、自分の問題)を確立、幅広いオーナーシップを築き、お客様の問題を解決する必要があります」

 

将来のフリート管理

カスタマー・エクスペリエンスをさらにパーソナライズするために、自動車ブランドは、一部地域で新しいサービスによる実験を行っています。

 

たとえば、英国の高級自動車メーカー、ベントレー社は、「特注のコネクテッド、ドアツードア」接客サービス、Bentley on Demandを試験しています。このサービスにより、試験運転や特別な状況で、オンデマンドで車両をリクエストする機会が既存の所有者に与えられます。

 

Robinson氏は、次のように述べています。「市場がさらに拡大する中で、企業は、お客様の変更要求に合わせられるサブスクリプション・モデルの実現を検討しています。たとえば、平日にシティ・カーやセダンを運転し、週末にスポーツ・カーやSUVと交換するというものです」

 

こうした進展により、将来的に自動車メーカーは、消費者に最終製品を販売するのではなく、フリート管理する企業として定義されるようになるかもしれない可能性を示唆しています。成功するためには、今から対策を講じて、この変化を乗り切る必要があります。

 

Fanderl氏は、次のように述べています。「企業は、『部門を越えて会社を一つにし、よりすぐれたカスタマー・エクスペリエンスの提供に向け日々志気を鼓舞してくれるような企業目的とは何か』ということを、自らに問う必要があります。肝心なのは、自動車メーカーは、電化、コネクティビティなどの大きなモビリティの変化すべてが実際に立ち上がるのを待っていてはだめだということです。真のカスタマー・エクスペリエンスとは、気持ちの在り方であり、終わりのない道のりです」

 

Becourt氏は、多くの自動車メーカーが、適応性の高いビジネスモデル、大きな目標を掲げるという条件はあるものの、ビジネスモデルの発展に向け、しっかりと体制を整えていると信じています。

 

Becourt氏は言います。「新製品やソリューションは、毎日売り出されていますが、同時に、自動車はリリースが決定するまでに数年かかり、市場への投入はさらに長くかかります。メーカーはより柔軟なアーキテクチャーを構築する必要があるでしょう。これらの複雑な製品についてのカスタマー・エクスペリエンスを強化したい場合には、段階的に考える必要があります。ユーザー・エクスペリエンスを活用、再利用、強化する必要があります」

著者: Rebecca Lambert

ダッソー・ システムズ

3Dソフトウェア市場におけるパイオニアであり、3DとPLMソリューションのワールド・リーダーであるダッソー・システムズ(仏)の日本法人です。
Comments are closed.