設計・シミュレーションJune 2, 2022

【デザインとシミュレーションを語る】 82 : CAE活用レベルの“デジタル化三段階”

【第10章 Simulation Governance】 82 : CAE活用レベルの“デジタル化三段階” ダッソー・システムズの工藤です。
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Avatar 工藤 啓治 (Keiji Kudo)

【第10章 Simulation Governance】 82 : CAE活用レベルの“デジタル化三段階”

ダッソー・システムズの工藤です。

昨年末に81号を書いて以来滞っておりました。もうシリーズ終わりかな?と思われた方もおられるかもしれないですね。いえいえ、第10章を完結させるまでは続きますので、頑張ります。

第70号「Digital Transformation時代のシミュレーションの役割」で、説明したデジタル化レベルの三段階を前提にしてお話しますので、まずは70号を読んでから、ここに戻ってきてください。読まれましたか?このDigitization, Digitalization, Digital Transformationの三段階を、CAEの活用レベルに適用すると、CAEを使うことの意味や位置づけが大分明確になるかもしれません。下記の図がそれです。

©Keiji Kudo

補足説明をしていきましょう。

1.CAEのDigitization

CAEはそもそもがデジタル化されているので、道具立てはたくさん揃っています。試作物をモデルで再現し、実験をシミュレーションで検証するというのが、CAEにおけるDigitizationになります。当たり前すぎるので、あえてDigitizationというまでもないと思われるかもしれませんが、そこに落とし穴があります。試作物を正しく再現し、実験を正しく検証しているかという古くて永遠の課題は、まさにDigitizationが正しく行われているかという問題そのものなのです。本ブログでも何度も述べてきましたし、前回の第81回「CAEと実験の相補的関係」は、まさにこのテーマです。また、属人的で手作業が多い、いわば職人技を要するところもボトルネックの一つとなります。第50回「計算品質を標準化する価値」では、モデル化の難しさについて説明しています。

2.CAEのDigitalization

Digitalizationでは、Digitizationの課題であった属人化をなるべく排除するために、モデル作成の作業を標準化し、できれば自動化を促進します。結果として、モデルとシミュレーションの品質が上がるだけではなく、作業効率も大幅に向上します。本ブログの多くのテーマはこの領域になることは、読者の皆さんはおわかりでしょう。2010年代初め、すなわちSPDM(当時はSLM)が利用され始めた当初は、まさにこの部分での活用事例が多くみられました。SPDMのおかげでCAEの煩雑な作業がずいぶんと整理されたと言えます。しかし、このDigitalizationレベルではまだ、改革にまでは至っていません。仕事のやり方は基本的に変わっていないのです。早くて便利で整理された段階となります。

3.CAEのDigital Transformation

どの企業にもある手戻りをいかに削減するかという課題を解決するには、設計プロセスのなかでのCAEの活用のしかたを根本的に変革していく必要があります。設計データ自体を紙ベースからデジタル・データ化へと移行をはじめ、CAEデータと実験データも含めた、オール・デジタル・データをプラットフォームの上でつなぎ、情報を更新していくという仕事の形に転換していくことが必要となります。「言うは易く行うは難し」の典型例ではありますが、世の中の設計プロセスはすべてこの方向に向かっているのです。すべての情報をDigitizationし、Digitalizationし、仕事のやり方を根本的に改革するためには、情報とモデルとプロセスが繋がったプラットフォームというシステムの上で仕事をすることが、唯一の方向性であり、Digital Transformationと呼ばれます。

企業でCAEを使用している読者の方は、自社の活用レベルがどのあたりかを考えてみましょう。私の実感を申し上げると、Digitization : Digitalization : Digital Transformation (DX)の実現比率は、7:2:1ぐらいか、あるいは8:1.5:0.5かもしれません。DXレベルに到達できている企業は、1/10かそれ以下ではないかという感触です。ですから、単にCAEを使っているということに安住してはいけないのです。まだまだ、その先があることを理解し、CAEだけを見るのではなく設計業務や生産業務のデータをデジタル化し、仕事のプロセスをシステム化し、そのなかでCAEをフル活用するしくみを考えないと、真の活用とは言えないのです。

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