設計・シミュレーションMay 19, 2021

【デザインとシミュレーションを語る】76 : IoT時代のV+Rライフサイクルー設計と再現

ライフサイクル循環型開発プロセスを構成する4つのフェーズのうち、設計フェーズと再現フェーズについて述べます。
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Avatar 工藤 啓治 (Keiji Kudo)

【第9章 情報爆発からのデータ活用】75 : IoT時代のV+Rライフサイクルー設計と再現

ダッソー・システムズの工藤です。ブログNo.73から継続しているテーマですので、リマインドしていただくためにも、73 : IoT時代のシミュレーション – リアルデータを還流させる新パラダイムをお読みください。IoTからの実利用データを取り込んだ大きな還流プロセスが構築されるので、ライフサイクル循環型開発プロセスと名付けました。この還流プロセスは下記の4つのフェーズから構成されています。本稿では、後半の二つのフェーズについて述べます。

© Keiji Kudo

③ 設計フェーズ:リアルデータに基づく統計的設計開発

前回説明した2つ目のフェーズにおいて、“これまで仮定あるいは想定でしかなかった誤差分布をリアル・データとして入力”する準備が整っているので、後はそれらのデータを活用して、サンプリング計算/最適設計探索/ロバスト設計/信頼性設計を実行することになります。これらの手法はすでに確立されているので、技術的な目新しさはないものの、設計プロセスの中にしっかりと定着して活用されている例は日本ではまだ少ないように見受けられます。ここで示した方法論は定着活用を促進させる試みでもあります。還流プロセスに沿って、リアルデータが大量に流れてくるので、それらを活用した膨大な設計シナリオが生成されるでしょう。とても手動で実行するのは無理なので、シナリオに基づいて検証するための大量のルーチンワーク計算を自動実行するしくみが必要になります。そうしたワークフローの例が以下に示されています。必然的に、こういった処理を自動化し、蓄積し、分析し、再利用するSimulation Process & Data Managementの活用が必須となります。

© Keiji Kudo

ロバスト設計についてより理解を深めたい方は、以下の過去記事をご覧ください。

【デザインとシミュレーションを語る】第32回 : 品質に求める最高と安定と安心と

【デザインとシミュレーションを語る】第33回 : 製品ライフサイクルで考える不確かさと定量化の方法
【デザインとシミュレーションを語る】第34回 : 製品ライフサイクルで考える不確かさと定量化の方法
【デザインとシミュレーションを語る】第35回 : シックスシグマの意味
【デザインとシミュレーションを語る】第36回 : ロバスト設計の価値と方法論
【デザインとシミュレーションを語る】第37回 : タグチメソッドとシックスシグマ手法

④ 再現フェーズ:個別条件におけるDigital Twin

今やモデル化技術が進歩し、十分な計算能力を利用できる時代になっていますので、高精度なDigital Twinモデルを構築することができるようになっています。しかし製品モデルをいくら高精度化したとしても、実稼働状況における荷重・境界条件・動作シナリオ・動作環境などのデータが正しくないことには、結果の精度は期待できません。すでにお気づきのように、還流プロセスが構築されれば、こうした実稼働状況に関するデータと高精度Digital Twin技術により、実現象を再現できる技術が整うことになります。その結果、下記に示すような多彩な応用が期待できます。

・条件変化/経年劣化状態の観測と予測
・極限的条件や想定外の状況再現
・超高精度予測
・実測との乖離の学習(自動パラメータ同定)
・最適センサー位置決め/センサー数削減/Virtual Sensor
・量産時データ+運転条件を入れた個別シミュレーション
・個別予防保守/AIアドバイザー
・自動運転/自動稼働支援
・リスク警告支援

追記紹介

弊社INDUSTRY WEBCASTにて、「DXとしてのシミュレーション活用を考える」シリーズの講演を毎月実施することになり、その第1回を来る2021年5月25日に配信することになりました。本ブログを購読されてきた方々にはお馴染みの内容ではあるかもしれませんが、昨今のトレンドである、Digital Transformationを切り口にした活用についてお話する予定です。

第1回副題:~シミュレーションはそもそもDigital Transformation (DX)である~

概要:シミュレーションを漫然と使うのではなく、どのような場面で、何のために活用するかで、その成果の出方は大きく違ってきます。単なる実験の代替として考えるのではなく、思考するための道具として視点を切り替え、活用方法を理解することで、“改革”効果を導くことができます。本来デジタルであるシミュレーションを、DXとして捉える考え方をご紹介します。

申し込みはこちらから受け付けておりますので、どうぞふるってご参加ください。

今のところ、4回までを想定しており、第2回以降のタイトルは下記の通りとなっています。

・第2回:森を眺める視点でシミュレーションを活用する
・第3回:1D-CAEを活用した想定設計で手戻り削減に貢献する
・第4回:要求性能に基づく予測と検証でデザイン・レビューを変革する

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