設計・シミュレーションMay 12, 2021

【デザインとシミュレーションを語る】75 : IoT時代のV+Rライフサイクルー収集と活用

ライフサイクル循環型開発プロセスを構成する4つのフェーズのうち、収集フェーズと活用フェーズについて述べます。
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Avatar 工藤 啓治 (Keiji Kudo)

【第9章 情報爆発からのデータ活用】75 : IoT時代のV+Rライフサイクルー収集と活用

ダッソー・システムズの工藤です。ブログNo.73から継続しているテーマですので、リマインドしていただくためにも、73 : IoT時代のシミュレーション – リアルデータを還流させる新パラダイムをお読みください。IoTからの実利用データを取り込んだ大きな還流プロセスが構築されるので、ライフサイクル循環型開発プロセスと名付けました。この還流プロセスは下記の4つのフェーズから構成されています。本稿では、最初の2つのフェーズについて述べます。

© Keiji Kudo

① 収集フェーズ:実稼働世界からのリアルデータ

途切れのない大量の時刻歴の生データを収集するIoT技術の基盤部分となります。世の中的には、ハードウエアと基本ソフトが一体となった形で、Edge Computingとしてすでに広く出回っています。素粒子実験や宇宙観測などの超大規模な実データを取り扱う世界では、数十年も前から実用化されている技術でもあるでしょう。実験データ管理を大幅に拡張して、リアルデータ管理体系として下記のような様々機能を持つ必要があります。

・メタデータ定義/標準化

・外れ値、異常値、誤りデータの抽出

・履歴データの標準化/統計データ化

・メタデータと履歴データの紐づけ

特に、この後の様々な段階でデータが正しく活用されるために重要なことは、メタデータを正しく付加して管理することです。メタデータ(属性)の重要性については、【デザインとシミュレーションを語る】 72 : 情報爆発をコントロールし活用する属性データの意味、にも書いていますので併せてお読みください。

② 活用フェーズ:データ分析と設計活用の前準備

ここでは二つの仕事が行われます。一つ目はいうまでもなくデータ分析です。整合性のとれたデータが収集できれば、昨今のAI学習や統計的データ分析から、様々な実利用状況を理解し、予測をすることができます。自動車、商用車、建機といった車体の燃費がテーマであれば、例えば下記のような分析ができるでしょう。

・実効燃費のバラツキ要因
・燃費悪化要因分析
・寒冷地/温暖地での環境相違と影響
・都市部/平野部/山岳地での違い
・運転方法の影響

ジェットエンジンや風力発電機などの分野では、すでにこうしたデータを活用して、運用・稼働操作にフィードバックし、最適な動作を行う仕組みができています。ですので、ここまでの技術もすでに実績が豊富な領域です。


さて、このフェーズの2つ目からの仕事が、還流プロセスにとって最も重要なものになります。次のフェーズの仕事であるシミュレーションへ入力するための、リアル・データからの標準化管理を行う役割です。これまで仮定あるいは想定でしかなかった誤差分布をリアル・データとして入力できることになるので、ロバスト設計/信頼性設計にとって画期的な出来事になるのです。また、極限条件や最悪条件を抽出して、個別品質向けのデータ生成を行うこともでき、製品設計シミュレーションの高精度化のためのデータ同化の準備を行うこともできすはずです。

次回に続く

【DASSAULT SYSTEMES 工藤啓治】

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