設計・シミュレーションFebruary 5, 2021

【デザインとシミュレーションを語る】70 : Digital Transformation時代のシミュレーションの役割

DXが脚光を浴びる中、シミュレーションはどのような役割を果たすことができるのでしょうか。
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Avatar 工藤 啓治 (Keiji Kudo)

【第8章 複雑性設計に対応する】70 : Digital Transformation時代のシミュレーションの役割

ダッソー・システムズの工藤です。ようやく第8章を締めくくることができそうです。世の中、Digital Transformation(DX)流行りです。特に、コロナ危機により、従来の仕事のやり方を変革せざるを得ない状況が目の前に出現したために、単なる変革ではなく、生き延びるための対策として、DXが脚光を浴びています。そうした状況でシミュレーションはどのような役割を果たすことができるのでしょうか。答えは簡単で、これまでやってこなかったことをやればいいだけなのです。本ブログの対象はデザインとシミュレーションに関わる一部の領域だけですが、まさにこうした改革をシミュレーションという視点で実施できるような手法や考え方を本ブログで述べてきました。それらは決して、昨今のAIのように突然登場出てきたすごい技法でもなんでもありませんが、10年前から実行してさえいれば、現在はスリムで強力な設計開発力になり、着実な成果を生んでいたはずの、手法であり思考であり文化なのです。DXと言われ始めるずーっと前から、その技術も方法論も存在していたのに、気づかない状態、知っていても実行できない状態が果たして何年続いてきたのでしょうか。気づき、実行してきた企業はいまやはるか前を進み、そうでない企業にはもはや見えていないのです。差がついていることさえ気づかない状態になっているのです。恐ろしいほどの二極化が進んでいると見ていいでしょう。

シミュレーションは本来デジタルなので、DXだから特に変わるということではなく、DXが進めば進むほどその土台が強固になっていくということなので、DXのなかでのシミュレーションの役割が重要になってくるはずです。シミュレーションの役割が変わるのではなく、DXという底上げにより周りが変わり、シミュレーションの意味がより明確になるのです。そういう意味では、DXに興味を持っている方もそうではない方も、改めて本ブログを第1号からお読みいただければ、より深く意図していることをご理解いただけると信じています。

さて、そもそも“デジタル化”ってどこまでのことを言っているんだろう?と自問した際に実は、自分のなかでの定義が曖昧になっていることに気づきました。そこで、少し調べてみると、そもそも、英語としてDigitizationとDigitalizationの違いがあり、DXを含めて3段階に分けられるということを知りました。以下が、改めて自分なりに”デジタル化“の3段階を整理した図です。

©Keiji Kudo

見ていただくだけで違いは一目瞭然なのですが、特にDXは業務改革だけではなく新たなビジネスモデルも含まれるということが重要です。いわば生き残り戦略です。手段としては“業務プロセスの再構築と技術の再連結”とだけシンプルに書かれていますが、これこそがデザインとシミュレーションの領域について本ブログで語ってきたことなのです。ここに上げられている例は、ECであればアマゾン、SNSであればFacebookやtwitter、MaaSであれば自動車産業、CloudであればIT産業が、自ら開発したり成功させてきたビジネスモデルです。それには、例外なくPlatformが使われており、DXの技術的根幹であるということを読み取ってください。Platformは、データやプロセスやモデルをつなぐ役割を果たす、ITのインフラであると言えます。弊社が2012年から3DEXPERIENCEプラットフォームを提唱・提供してきたのは、ビジネスの転換の必要性を訴え、お客様に実現していただくためです。それは、デジタルでなされるしかないわけですから、Digital Transformationは、まさに弊社のミッションそのものです。そのような視点で、“Digital Transformation時代のシミュレーションの役割”という今回のタイトルへの回答を改めて考えてみましょう。端的に言えば、シミュレーションはDigital世界での性能を決定する役割です。性能は製品の根幹です。したがって、Digital世界でのシミュレーションは、その本質性がさらに明らかになり、かつシミュレーションを活用する領域も実施者も、それと知らず使う利用者も増えていくでしょう。Democratizationが自然進行するはずです。そういう意味では、単なる一つの役割を超えたデジタル世界での柱になるはずだというのが、筆者の考えです。これからは、誰でもどんな形であれ、シミュレーションへのかかわりがどんどん広がり深くなっていくはずです。これは信念です。それでは、本投稿で長かった第8章を終えることといたします。

蛇足ですけれども、政府がようやくデジタル庁を立ち上げたとはいえ、DXを議論をする以前に、日本ではまだまだ、DigitizationとDigitalizationの整備が不十分であることは一目瞭然に見えます。日本にはもっと頑張って欲しいと願っていますが、いままでのやり方ではデジタル後進国になるのではないかと危惧しています。ほんとに蛇足でしたね。

【DASSAULT SYSTEMES 工藤啓治】

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