【デザインとシミュレーションを語る】 40 : 設計者の感性とは美しい設計=機能美-「風立ちぬ」を観て

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【デザインとシミュレーションを語る】

 

【箸休めの章 美しさとデザイン】 設計者の感性とは美しい設計=機能美-「風立ちぬ」を観て

 

(この記事のオリジナルは、2013年に書かれました。)

2013年に封切られた宮崎駿監督の映画「風立ちぬ」を、ゼロ戦の設計者堀越二郎氏を主人公にしているので、ジブリファンも飛行機ファンも、観られた方多かったのではないでしょうか。

 

メインの主題は、二郎の美しい飛行機をつくりたいという夢。良きライバルとの会話の中で、飛行機を一目見て、飛ぶ姿を思い浮かべ、”美しい”と語る場面が何度かあります。時代が故に、それらは戦闘機や爆撃機であるのですが、彼の夢に出てくるイタリアの伯爵は、納入前の軍用機にたくさんの人を乗せたり、民間用の大きな飛行機を作りたいという夢を語ります。夢のなかの、しかも技術者の夢、でしか、軍用機ではない美しい飛行機の設計のことを考えられない時代と設計者の心のギャップを、そのようなシーンで表現したのでしょう。”美しい”という一言は単なる形だけではもちろんなくて、バランス、造り、細かな設計意図などすべてを総合的にとらえた、設計者魂を震わせる言葉なのですね。

 

たくさんあった印象的な場面のなかで、特に私のツボにはまったのは、サバの骨が登場するところ。学食でサバ焼きを食べている二郎が、サバの骨の曲線をじっと見て、美しいと言います。そのあと、文献を調べ、骨の曲線を模擬した翼型がすでに設計されていることを突き止め、納得する場面に、よき技術屋のこだわり心を、感じてとてもうれしくなりました。ちょっとした場面ですが、本質ついてるなあと。

 

現代言葉に翻訳すると、”ものづくりの原点である技術者の夢”を、感性に訴えて思い出させてくれる映画、とでもいいましょうか。飛行機は特に、意匠(スタイリング)的なことは考慮されず、完全に機能から要求される形であるにも関わらず、結果としてその形・スタイルとしても美しくなってしまうというのは、自然現象+工学の結晶である航空機が、アートとしても素晴らしいということなわけで、そのつながりに人知を超えた何かを想起せざるを得ません。

 

あるいは逆に、”美しい“という人間の感覚は自然の形から学んだということなのかもしれません。特に流れに関わる飛ぶ鳥、泳ぐ魚には優美は曲線やパターンがたくさん存在しますので、人間のつくりものも結局は自然の姿かたちを模倣しようとする試みだとすれば、その美しさが自然に近づくのも当然というえば当然なのでしょう。

 

そういえば、ゼロ戦を設計した建屋が、いまでも三菱重工の名古屋製作所に残っているというのをご存じでしたか?

 

【SIMULIA 工藤】

 

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工藤 啓治 (Keiji Kudo)

工藤 啓治 (Keiji Kudo)

工藤はCAE分野で38年の経験を持つエキスパートとして、CAE開発・販売、HPC活用・マーケティング、最適設計・ロバスト設計市場開拓などを経験し、現在はシミュレーションを活用した設計業務改革コンサルと自身のノウハウ形式知化に取り組んでいます。
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