【デザインとシミュレーションを語る】30 : 1D-CAEの価値とパラメータ同定

ダッソー・システムズ ブログ
【デザインとシミュレーションを語る】

 

第4章 計算精度とパラメータ同定 -1DCAEの価値とパラメータ同定

 

昨今1D-CAEというシミュレーション技術が盛んになっています。今回は、そのイントロと本質を欲張って、一機にまとめて紹介してしまいましょう。

 

(1)1D-CAEとは、その価値は?

1Dシミュレーション(1D CAE)って何?その価値は?を手っ取り早く説明したいと思って少し書き始めたものの、簡潔にその本質と価値を言い表している素晴らしい公開論文がありますので、紹介・引用させていただくことにしました。

 

2012年の東芝レビューに掲載されている『1DCAEによるものづくりの革新』という論文です。

http://www.toshiba.co.jp/tech/review/2012/07/67_07pdf/a03.pdf

 

著者の一人の大富氏は、機械学会、設計システム・工学部門の部門長や、日本計算工学会の会長などを歴任されてきた、CAE(シミュレーション)分野の第一人者のお一人です。かなり前から、1DCAE分野の啓蒙・応用・推進活動に努めておられます。この2年ほどは機械学会の講習会も盛んに企画・実施されています。

 

高々4ページのこの論文は、専門外の人にも読みやすく、その本質をずばりと突いた文言にあふれています。下手な本を買って読む前に、まずはこの論文に目を通せば、勘所がつかめると思います。ここに書かれていることが本当に実践されるまでには、まだまだ時間はかかるでしょうが、シミュレーションを活用した設計の方法論は間違いなくこの方向に動いているので、一度は目を通しておくことをお勧めします。

 

以下は、私なりに引用したいと思った部分です。

 

===以下、引用はじめ===

 

・一般に、 わが国のものづくりは与えられた仕様に基づいて、要素製品を作ること を得意にしているが、これだけでは今後のものづくりには不十分である。いわゆるデザイ ン思考を設計に取り込む概念及びそのツールが必要である。

 

・ここで “1D” は特に1次元の意味ではなく、物事の本質を的確に捉え、機能を見通しのよい形式でシンプルに表現することを意味している。

 

・1DCAEは対象とする製品の価値、機能、及び現象をハードウェアやソフトウェアに関わらず漏れなく記述し、パラメータサーベイを可能にする環境を構築する。

 

・実は1DCAEは特殊な考え方ではない。以前から、技術者は対象としている製品をモデル化したいと考え、自分の能力の範囲で時間を掛けてモデル化やパラメータサーベイをしていた。

 

・⑴ 上流設計の実現:1DCAEは全体最適による価値最大化、コスト最小化、及びリスク最小化が可能である。

 

・⑵ システム全体の可視化:メカや、エレキ、ソフトの各機能の可視化、機能を実現するパラメータ(数値)の可視化、 及びどの分野を対象にしているのかといった情報の可視化を実現できる。

 

・⑶ エンジニアの育成:1DCAEでは物理現象を十分に理解していることが最大の効果を発揮することにつながり、 考えている製品イメージを機能に展開する能力が要求される。このように1DCAEには技術者に学習を能動的に働きかける重要な効果がある。

 

・1DCAEで決定された仕様は3D CAEに受け渡され、メカ設計や、エレキ設計、ソフト設計、意匠設計など個別設計が実行され、個別の検証と妥当性確認(V&V:Verification & Validation)が行われる。それら個別設計の結果は1DCAEに戻され、システムV&Vを行い、システム及び個別設計の成立性を確認した後、製品製造へと受け継がれる。

 

===以上、引用終わり===

 

(2)1D CAEを実施するモデルとシミュレーション

ソフトウエアとしてはたくさん出回っています。汎用的なものから、冷却専用・エンジン専用に特化したものまで様々です。私の会社で扱っているDymolaシステムは、Modelica言語という汎用的な体系で構築できるパイオニア的なソフトです。このページは、製品や機能を紹介することを目的とはしていませんので、興味のある方は、下記のようなURLにアクセスいただければ情報を得ることができます。

 

http://www.3ds.com/ja/products-services/catia/products/dymola/

http://guide.jsae.or.jp/wp-content/uploads/product_pdf/130041547511H9itcLHvBNjrkCWDS7Rf2xIYUXf008161000.pdf

 

(3)1D CAEに必須のパラメータ・スタディ

いざ1D CAEのモデルと構築する段になりますと、ライブラリや方程式の中に、たくさんのパラメータが表れてきます。標準的に用いればよいパラメータもあれば、自らの製品特性として、実験してからでないと決められないもの、経験則数値モデルなどを含んでいることがわかります。このようなときにこそ、直前に紹介した「シミュレーションの精度向上という根本問題」にて詳しく記載したパラメータ同定の技術が必須になるのです。

 

【SIMULIA 工藤】

 

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工藤 啓治 (Keiji Kudo)

工藤 啓治 (Keiji Kudo)

工藤はCAE分野で38年の経験を持つエキスパートとして、CAE開発・販売、HPC活用・マーケティング、最適設計・ロバスト設計市場開拓などを経験し、現在はシミュレーションを活用した設計業務改革コンサルと自身のノウハウ形式知化に取り組んでいます。
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