設計・シミュレーションApril 5, 2016

【デザインとシミュレーションを語る】24 : ”設計とは逆問題”のココロは?(1)-森を見る利点

シミュレーションで問題を解くとき、モデルを作成し、初期値や境界条件を入れて、答えを出します。Y=F(X)のXを入れて、Yを求める方法です。一つの問題を詳細に検討することが目的であれば、この方法で十分です。一方、設計の問題は本来、求める制約条件や性能目標からなる解空間があって、それを導く設計空間(設計パターン、設計変数の組み合わせ)を求めるところに、あります。
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Avatar 工藤 啓治 (Keiji Kudo)

第3章 設計探索とトレードオフ  -”設計とは逆問題”のココロは?(1)-森を見る利点

当たり前の話から始めます。シミュレーションで問題を解くとき、モデルを作成し、初期値や境界条件を入れて、答えを出します。たくさんの設計変数の組み合わせ(設計空間)を試すことで、それに対応した答え(解空間)がたくさん見つかります。この解き方を、順問題といいます。Y=F(X)のXを入れて、Yを求める方法です。一つの問題を詳細に検討することが目的であれば、この方法で十分です。

一方、設計の問題は本来、逆問題、すなわち求める制約条件や性能目標からなる解空間があって、それを導く設計空間(設計パターン、設計変数の組み合わせ)を求めるところに、あります。Y=F(X)のYを想定して、Xを求める方法です。順問題であれば、Xを入れるだけで、Yが出てきますが、Yを指定する逆問題の場合は、二つの困難があります。

1) Xを求めるには、Yを”探索”する方法しかない(理論解があるような超基礎問題以外は)=>たくさん計算しなくてはいけない 2) 指定したYを実現するXは多価関数になるのので、一意には決まらないこと=>たくさんの選択肢がある

これがあるために、パラメータスタディや設計解探索や最適解探索を行う必要があるのは、言うまでもないように思えますが、実はとても重要な使い方が隠されているのです。単に良い結果を得るための方法としかとらえないならば、できる限り少ない計算回数で結果を求めたいと思うことでしょう。ところが、たくさん計算すればするほど、上質の設計知情報が現れてくるのです。

森の一点から高度を上げながら、次第に森の全体像を敷衍していくようなイメージですね。谷や山や川が立現れて来るのですが、その姿はデータ分析の技によって、その姿を一目で見てわかりやすい形に、瞬時に変える見ることができるのです。たとえば、こういうイメージではいかがでしょうか。

森を上空から直下を見ただけでは、高さや山谷の関係は分かりにくいです。稜線の横から見ると、高さの変わり具合がわかります。斜めから見ると、今度は稜線の分岐している様子もわかります。危ない場所か、急峻で安定していない場所かも、見る角度や位置を変えればよくわかります。座標軸を変えてしまうと、今度は別の視点での山や谷が見つかり、前にみた山谷との関連もわかるようになります。比喩的には単純すぎるかもしれませんが、シミュレーションの設計空間と解空間の全体像をそのように見れたら素晴らしいと思いませんか?

いまから考えると実に当たり前のように思えますが、“森を見る”という視点に立てたのは実は結果論で、まずは逆問題をどうすれば解けるのかということを考えたあとに、結果として気付いたのです。量から質に転換するというのは、まさにこのようなことをいうのだと思います。高々、数10ケースのデータを見ても何の役に立つ分析はできるとは思えないどころか、検討するケース数が増えるだけで、中途半端に思われます。ところが、1,000~10,000ケースといった数になったらどうでしょうか?とてもではありませんが、個別に見たいとは思わないでしょう。全体の特性を見てみたいと自然に思うはずです。ビッグデータのモーチベーションと同じです。シミュレーションの世界では、それまで1,000以上のオーダーの計算を流すという経験がなかっただけなのです。次の記事ではその点を少し掘り下げてみます。

-この記事続く 【SIMULIA 工藤】

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