【デザインとシミュレーションを語る】23 : 最適解は失敗の学習結果

ダッソー・システムズ ブログ
【デザインとシミュレーションを語る】

 

第3章 設計探索とトレードオフ -最適解は失敗の学習結果

 

優秀な設計者とは失敗の経験から学んで、よい設計のコツを知っている人。経験に裏付けられた知識と知恵を持っている技術者ということですね。
最適解探索をした後、条件にあった最適解だけをぽっと選んで、いままでよりいい答えが見つかりましたで終わってしまうのは、設計行為とは言えません。選んだ理由を説明していないからです。その解をどういう理由で選んだのか、他の解を選択しない理由はなんなのか、最適解の集合を分析することは、仮想的な経験集合から知識と知恵を得ることに他なりません。解全体を分析することが、とても大事なのです。さもないと、経験を捨て去ることと同じです。このことは、何度でもしつこく言いたいことです。

 

最適解探索アルゴリズムはどの手法も、平たく言えば、悪い解(失敗)とより良い解(成功)の比較と選択の繰返しを数値的に行っているわけなので、失敗の学習をした結果として最適解を探索したのだという見方ができます。人間世界であっても、経験のない設計者がいきなり優れた製品を設計することができないように、探索的経験からの比較により裏付けられないと、優れた解もみつからないのです。最終的に選択する最適解(成功)が1つだけであったとしても、その裏(過去)には数百回あるいは数千回の最適ではない解(失敗)があって初めて、もっとも優越な解(成功)を選択できる、ということなので、失敗を学ぶ方法を確立すれば、成功に導く方法が分かるという言い方もできるでしょう。

 

条件が変わると、さっきの最適解ではなく別の解が最適解となることはしょっちゅうあります、失敗だと思われていた解が新たな最適解になりうるのです。すなわち、過去計算データベースというのは、終了してしまった無価値遺産ではなく、“成功例を導くための膨大な知的資産”であるということができます。このようなデータベースを利用するとある種の分析を施すことによって、Best Practice Rule(熟練者のノウハウ)を定量的に抽出することが可能になると期待できます。

 

実は人間社会の活動の中では、ビッグデータを利用した機械学習を行い、もっともふさわしい判断や予測も行うということで実現されています。それにより、利益最大化/効率最大化を目的とするというのは、まさに設計の最適解あるいは満足解の探索と同様なのです。用いられている手法も、片や機械学習、片や統計的モデルと呼ばれますが、かなりのところ共通する統計手法が使われています。こういったことを、シミュレーション領域でシステマティックに実施するために、Simulation Process & Data Management (SPDM)という技術分野に注目が集まっているのです。

 

【SIMULIA 工藤】

 

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工藤 啓治 (Keiji Kudo)

工藤 啓治 (Keiji Kudo)

工藤はCAE分野で38年の経験を持つエキスパートとして、CAE開発・販売、HPC活用・マーケティング、最適設計・ロバスト設計市場開拓などを経験し、現在はシミュレーションを活用した設計業務改革コンサルと自身のノウハウ形式知化に取り組んでいます。
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