【デザインとシミュレーションを語る】13 : パラメトリック性の本質は新しい組み合わせ

ダッソー・システムズ ブログ

第2章 自動化とパラメトリック性 -パラメトリック性の本質は新しい組み合わせ

設計とシミュレーションのことを語るとき、”パラメトリック”というのは、とても本質的な概念です。ものを設計するとき、パラメトリックに変更できるというのは、日本語でいうと変数化できるということですから、変数の値を変えることで簡単に設計を変更できるということです。仮に設計変更の仕方をすべてパラメトリックに定義出来たとすると、あとは、その値の組み合わせだけであらゆる設計パターンを網羅できるということになります。理屈の上では。

この考え方は、既存の製品データを活用して、改良する場合にはとても有効に働きます。おそらく、世の中の製品とその構成部品の8~9割は、既存製品の改良もしくは流用ですから、パラメトリック性を徹底することで、実はかなり効率よく設計できるはずなのですが、実際はとてもうまくいく場合と、なかなか困難な場合と両極端に分かれるのです。

理由は二つあります。一つは、パラメトリックにモデル化出来ることに気付かないか、実現にたいへんな手間がかかる場合。これは、製品設計のパラメトリック性の課題といえるでしょう。二つ目は、パラメータの組み合わせが膨大過ぎて、よりよい組み合わせを探索するのが難しい場合。こちらは、組み合わせ最適性の課題です。

さて、ここまで読んでいて、たぶん、”違うんだよなあ”と、イライラされている方も多いでしょう。”設計の本質はパラメトリックでないところにあるんでは?”と。答えはYESとNOの両方なのです。全く新たな部品や機能を設計した場合は、従来にはない“パラメータ”を生成したといえるので、YESです。先に、”8~9割は、既存製品の改良もしくは流用”と書きました。残りの1~2割に相当するのが、従来のパラメータではできない設計、言い換えると新たにパラメータを生成する問題です。ここが大多数の方が想像される設計の醍醐味、創発に基づく設計領域であろうと思います。とはいえ、どんな製品に対しても常に創発的な設計ができるわけではないという限界があります。

一方のNOの場合はといいますと、従来のパラメータで設計できるのだけれども、これまでにない組み合わせ方や値で、素晴らしい性能を発揮したり、困難な制約条件を乗り越えたりといった革新設計が可能になります。いわば、従来発想からの“想定外”のパラメータの組み合わせということになります。発明や発見をされてきた多くの方々は、実は新しいパラメータの組み合わせやつなぐことこそが、革新的なアイデアなのだ、ということを言っています。

そういう意味では、徹底的にパラメトリック設計を追求した先に、創発設計の芽が出てくるとも云えるでしょう。創発とは、徹底学習が蓄積された結果としての閃き発想であろうと考えます。一つのパラメータを新たに発見や発想するのには、過去のパラメータ知見が集約されているのですから、パラメトリック性を追求するという方法論は単純に見えて、実はたいへん奥が深いということがわかるでしょう。

まとめると、下記のように整理できます。

13 - パラメトリック設計の本質
[カテゴリーA] 従来のパラメータの変更:改良設計=ルーチンワーク

[カテゴリーB] 従来のパラメータ同士の新たな組み合わせや従来限界を超えた値:革新的設計

[カテゴリーC] 新しいパラメータの生成:創発設計

このカテゴリー原則はいろんな分野に適用できます。たとえば、普通においしい料理は、[カテゴリーA] ですが、驚きをもたらすおいしい料理というのは、知っているけれど予期せぬ食材が使われているときだったりしますので、[カテゴリーB] でしょうか。デジタルカメラは、フィルムカメラから見ると[カテゴリーC]になりますね。AppleがもたらしたiPhoneのビジネスモデルは、[カテゴリーC]のように見えて実は、[カテゴリーB]であるところが、ミソだと言われています。スティーブ・ジョブズ自身が、“Creativity is just connecting things.”と書いているのです。

[参照先:http://www.huffingtonpost.com/elysabeth-alfano/business-art-innovation_b_2450438.html]

また、ジェームス・W・ヤングの『アイデアのつくり方』という本で語られている一文;

“アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない”

が一番有名かもしれません。Googleで、“新しい組み合わせ”で検索するとたくさん出てきますよ。

さて、ものづくりにおいても、この原則は同じではないかと強く思うしだいです。パラメトリック設計については、このあとも様々な視点で議論していきます。

【SIMULIA 工藤】

工藤 啓治 (Keiji Kudo)

工藤 啓治 (Keiji Kudo)

工藤はCAE分野で38年の経験を持つエキスパートとして、CAE開発・販売、HPC活用・マーケティング、最適設計・ロバスト設計市場開拓などを経験し、現在はシミュレーションを活用した設計業務改革コンサルと自身のノウハウ形式知化に取り組んでいます。
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