【デザインとシミュレーションを語る】第十二回 : “自動化を進めると設計者が考えなくなる?"への回答

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第2章 自動化とパラメトリック性 -“自動化を進めると設計者が考えなくなる?"への回答

 

コップ半分の水を見て、半分しかないと見るか、半分もあると見るか、の視点相反はどこにでもありますね。仕事の議論で噛み合わないのは、案外こういう根っこの見方や感性に寄るところがあったりしますから、少々厄介です。以前、COURRIERという雑誌の『そして、「理系」が世界を支配する。』という特集号を読み、わが意を得たりと、というところを見つけました。

 

「アルゴリズムは証券アナリストに取って代わるのか」 というビジネス・ウィークの記事を引用し、ベンチャー企業のナラティブ社のミッションを、「最高の財務アドバイザーやアナリストが持つスキルを、機械(コンピュータ)にも使えるものに変えること」と紹介していました。そうすると、仕事を失くすことを恐れたアナリストからの反発はないのかという問いに対する回答が、次の言葉でした。"アナリストたちの大半は、自分は高度なスキルが必要な仕事に時間を使うようになり、低いスキルの仕事は機械にやらせればよくなる、と考えています。"(COURRIER 2013年11月号より引用)

 

ここのところを読んで、このようなポジティブ思考の産業は進化の速度が速いだろうなと感じました。お金の動きに直接かかわる業種なので、あらゆる技術や方法論を駆使するマインドが根付いているのでしょう。この自動化という言葉への反応を、"水はまだ半分もある"思考だなとうれしく思う一方で、同時に私の関わる業界で今だに耳にする"水は半分しかない"思考の例を思い出してしまいました。

 

設計の仕事、特にシミュレーションを使う仕事には、作業を自動化すると驚くほどの効率化が得られる場合が多く、そういう議論をする中で、たまに出てくる言葉が、"自動化を進めると設計者が考えなくなる"というものです。これは、三重の意味でネガティブで、私は以下のように反駁します。

 

1)仮に自動化して考えなくなる程度の仕事であれば、むしろ考える必要のないルーチンワークをしていたみなすべきで、即刻どんどん自動化してしまえばいいはずです。自動化で、効率と品質が上げると考えるべきべきです。

 

2)設計者が考えなくなったとすれば、それは自動化のせいではなく、出てきた答えを吟味する方法を教育していないことの方に問題があるかもしれません。考えなくなる原因をはき違えた議論だと思います。むしろ、ルーチンワークがなくなり、"考える場"を増やせると考えるべきで、そういう業務トレーニングが必要だということになるでしょう。

 

3)コンピュータ(機械もしくはプログラムでも)で、思考は自動化できないのです。ルールを教えアルゴリズムを埋め込むことで"作業"だけが自動化できます。もし、設計の結果を判断するレベルまで自動化可能になったとすれば、結果判断が、アルゴリズムで記述可能な作業レベルになったのだ、と考えるべきです。であれば、設計者は、先の証券アナリストのように、より高度なスキルの仕事を目指すべきです。

 

要は、"自動化を進めると設計者が考えなくなる。"という思考は、従来型の仕事のやり方から脱却できていないことの現れだと思うのです。考えなくなるからダメ、ではなく、(そのダメな理由も上記のように間違っているのですけれど)、ダメならば、どうすれば考えるようになるか、という状況を作ればいいと思うのですね。

 

さらに言い換えると、自動化すると考えなくなるという以前に、では現状の方法で、設計者は十分に考えていると言えるのかということも問わねばならないでしょう。仮にそうだとすると、設計者のスキルのせいではなく、設計者がより思考できるようになるための、十分で正確な情報を提供するしくみや、それらの情報を適切に扱う方法を検討すべきなのでは。むしろ、そちらの方が原因ではないか?と私は考えています。ちなみに、この点が私の専門なのですけれど。

 

どの企業に行っても、仕事は増える一方だという話を聞きます。必ずしも、商品が売れてるからということではなくて、要求種類が増えた、仕向け地が増えた、サイクルが速いといった、仕事の量や密度が増えたことによるものなのです。そのような状況では、十分に考えた設計を行うのは難しくなるのは当然のことです。

 

特に、シミュレーションを行える人材は、希少、増やせない、育てる時間がないという状況の中で、現場のエンジニアは対応しなくてはなりません。そういう切羽詰まった中で、今までのやり方を変えずに、"自動化を進めると設計者が考えなくなる。"で、思考を止めたらどうなるでしょうか。冒頭の、証券アナリストの反応と、改めて比較してみていただきたいと思います。他産業の状況や考え方も往々にしてとても参考になるものです。

 

【SIMULIA 工藤】

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3Dソフトウェア市場におけるパイオニアであり、3DとPLMソリューションのワールド・リーダーであるダッソー・システムズ(仏)の日本法人です。
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