【建築・建設業界コンテンツ】06: 3Dのコーディネーション力に賭ける~業界の先駆者となり、大きな見返りを手にした Hardstone Construction社~

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積極的に発言することで知られるHardstone Construction社のPat Henderson社長は、ディスクリート型製造業で先んじて導入された3D技術を、商業建設プロジェクトの課題に適用することで、建設業界の伝統に挑みました。

その挑戦の過程で、建設プロジェクトにおいてコスト超過が決して避けられない問題ではないこと、新しい手法に挑戦しても十分な見返りが得られることが証明されました。

「3Dには、建設業界に 山積する問題を解消する力が あると確信しています」
PAT HENDERSON氏
HARDSTONE CONSTRUCTION社創業者・社長

ラスベガスに本拠を置く総合建設会社、Hardstone Construction社の創業者であるPat Henderson氏は、同社を起業する前に、米国を拠点とする2社の大手建設会社で30億ドル規模のプロジェクトをいくつも率いました。業界で30年間の経験を持つHenderson氏ですが、この業界には今なお同氏をとまどわせる側面があります。たとえば、建設業界ではなぜ、ビジネスを遂行するうえで20%のコスト超過が当然のことだと受容されるのでしょうか。なぜ建設会社では、他の多くの業界で実績があり、コスト超過を解消できる可能性のある3D設計技術の導入が進んでいないのでしょうか。

これらの疑問の答えを見つけることは、 Henderson氏にとって重要な意味があります。彼は従業員たちと、Hardstone Construction社の後継者になるべく準備中の娘のために、自分が経験してきた以上に強固で収益性が高く、問題の少ない建設業界を残したいと考えているからです。 Henderson氏は率直に、「3Dには、建設業界に山積する問題を解消する力があると確信しています」と語ります。「3Dは建設プロジェクトのむだを10%以上削減してくれると信じています。米国だけで建設関係に数兆ドルが費やされていることを考えると、莫大な額の節約です。」

独自の展望

2007年、Hardstone社は、ラスベガスで数期にわたって実施されるTivoli Village多目的プロジェクトの総合請負業者に選ばれ、Henderson氏が自分の考えを試すチャンスがついに訪れました。店舗、オフィス、駐車場から成る200万平方フィート(約18.6万㎡)のプロジェクトでは、スケジュールの遅れとコスト超過のリスクは巨大なものです。特に、主任建築家、構造工学エンジニア、MEP(機械、電気、配管)エンジニアがプロジェクトから去り、さらにリスクが高まっていました。その後プロジェクトのオーナー企業は、Hardstone社に、当初の建設調整業務に加えて空席となった業務も担うよう要請したのです。

 

この非常に困難な課題は、チャンスでもあり ました。Henderson氏は、Hardstone社が ディスクリート型製造業界に革新をもたらし た最新の3D技術を使用して、Tivoli Village プロジェクトを救うことができたなら、それが 自分の考えを疑問の余地なく立証すること になるとわかっていました。

 

計算された賭けに成功

Henderson氏は、仮想のTivoli Villageの3Dモデルを細部まで正確に作成できれば、コストのかかる物理的な資材の代わりに低コストのデジタル作業で、プロジェクト・チームがリスクを特定し、解消できるようになると考えました。また、コーディネーション効率を高める3Dモデリングを利用することで、すべての関係者がより効率的に協力できるようになり、作業現場は情報を活用した安全で生産性の高いものになると確信していました。

2011年にオープンしたTivoli Villageの第1期終了までに、Henderson氏のもとには証拠が集まっていました。Hardstone社は、全業者間のコーディネーションを社内で管理し、3億ドルのプロジェクトを予定どおり納入、請負業者や下請業者からの追加請求もありませんでした。Henderson氏は、余分にかかっていた可能性のある計画関連コストだけで50万ドルから100万ドル、全体では200万ドルから300万ドル節約できたのではと見積もっています。

 

3Dのコーディネーション力によって「リーンな」建設を実現

建設業界では、Henderson氏が選んだ高度な3Dアプリケーションの経験者は限られていたため、Tivoli Villageプロジェクトには、多彩な経歴を持つ3人の3Dモデリング専門家が加わりました。航空宇宙技術関係の建設の専門家で以前はPratt & Whitney社に勤務していたPatrick L’Heureux氏、以前はBombardier社に勤務していた、機械工学を専門とするNicolas Cantin氏、以前

は高名な建築家Frank Gehry氏の下で働いていた、建築家で都市設計専門家のBecher Neme氏の3人です。少数のサポート・スタッフと共にプロジェクトの上級メンバーとして働く3人のチームは、建物のエンペロープ、構造、MEPシステムの全体を社内でモデル化しました。また、建設工事チームのために、リンクされている3Dモデルから直接、細部まで他作業との調整を図った現場用の図面を作成しました。

 

正確なモデルで正確なコーディネーションを促進

プロジェクトで主な利点となったのは、頻出する3D形状を手作業でモデル化する必要がないことでした。建築家が提供するスプレッドシートや設計表に記載されているパラメータを基本コンポーネントのテンプレートに入力し、個々のコンポーネントのバリエーションを生成したのです。

「ほんとうにすばらしい利点でした。手作業でモデル化していたら、時間がかかり、人為的なミスが起きやすい作業です。実際、自動化処理を利用できなければ、ほとんどのモデリング担当者は最初の段階でバリエーションをモデル化せず、間違いややり直し、コスト超過につながっていたでしょう」とCantin氏は語りました。

Neme氏は、初期設計と最終的な製作図の間でデータを繰り返し利用できたため、Hardstone社はMEPのルート決定を最適化し、資材を30%削減できたと見積もっています。「これは予算上素晴らしいことですが、環境にとってもよいことです。モデルに基づいてすべてをぴったりの量で発注するので、無駄がありません。」構想時の予算が500万ドルの場合、発注変更によって優に20%を超えるコスト増となる、つまり100万ドルの超過となる場合もあります。Tivoli Villageでは、発注変更のコストはゼロでした。「製造業界のプロセスを建設に適用する方法を見つけることを常に念頭に置いていました」とCantin氏は語ります。

 

ワークフローの合理化によって利害の対立を解消

Tivoliプロジェクトでは、建設現場の作業者が3Dモデルを確認することができたため、さまざまな系統がどのように同じ空間に収まるか、どの順序で施工する必要があるか、そして、次の業者が施工する空間が残るように作業することがいかに重要かを容易に、しかも正確に理解することができました。

「建設中に現場で、業者間の対立を解決することにむだな時間を費やすことは事実上ありませんでした。単に、そうした利害の対立がなかったのです」とL’Heureux氏は述べています。第1期の3億ドルのプロジェクトが完了したとき、3Dアプリケーションが建設業界を変革する可能性を確信したHenderson氏は、娘に3Dアプリケーションを学習するよう手配しました。「彼女がこの業界で活動するのは私よりずっと後になります。私は、娘が最適なソリューションをすぐに活用できるようにしておきたいのです。それが建設業界の将来の姿だと確信しています」とHenderson氏はコメントしています。

 

文・クレッグ ライス

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