建築・建設February 20, 2015

【建築・建設業界コンテンツ】2:BIMのエキスパートBecher Neme氏が推進する変更指示ゼロに向けた取り組み

カリフォルニア州ロングビーチを拠点とするBIMのコンサルタント会社であるNeme Design Solutions社は、極めて複雑なプロジェクトを簡素化し、ファブリケーションを実現する専門家集団です。 創設者であるBecher
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カリフォルニア州ロングビーチを拠点とするBIMのコンサルタント会社であるNeme Design Solutions社は、極めて複雑なプロジェクトを簡素化し、ファブリケーションを実現する専門家集団です。

創設者であるBecher Neme氏が率いる同社の建築家およびエンジニアのチームは小規模でありながら、ゼネコン現場での業務経験が10年以上のメンバーで構成され、さらにCATIAソリューションに関する高い専門性を有しています。 同社は、現場の経験とソフトウェアの知識を融合することで、モデルの干渉検出やインターフェース上の課題解決といった、ニッチで独自性のある分野の開拓を推し進めてきました。

過去の改善が現在の非効率に

Neme氏は、建築・建設業界では、建設効率の改善手段としてBIMの導入が進み、ツールの使用が一般化したものの、今もなお一定の無駄が生じているといいます。 Neme Design Solutions社の主要な事業の一つが、BIMモデル間の調整を行い、干渉を検出するサービスであることは、まさにそれを表しています。今日、多くのゼネコンは、プロジェクトを立ち上げるにあたってサブコン各社とのミーティングを行います。

数十名の関係者が3Dモデルを持ち込み、終わりのないミーティングを幾度も行う中で、干渉チェックを行い、システム間の矛盾の可能性を指摘します。干渉が見つかった場合は、それを修正するため各モデルが更新されます。 Neme氏はこうしたミーティングに出席後、次のような疑問を覚えました。これらのミーティングを準備するために、どれほどの時間が投資されたのだろうか。関係者全員が同じ場に集結するために、どれだけの金額が費やされたのだろうか。BIMがプロジェクトの効率を高めるというならば、こうしたプロセスを効率化する方法はないのだろうか。

一元化ソリューション 干渉検出は容易に実施できますが、干渉をより効率的に解決することによって、これまでになかった価値を得ることができます。それを実現するため、Neme Design Solutions社は、一元化モデルというコンセプトを探究しました。 そのアイデアとは、Neme Design Solutions社がゼネコンと共に、精度の高いBIMモデルをサブコンの参画前に作成する、というものです。少数精鋭のチームが精度の高いモデルを作成します。この段階で、最大9割の矛盾を解決することが可能となります。

次に、サブコンが参画します。このより大きな集団は、何百点もの不一致を修正するのではなく、ファブリケーションや設置に直接取り掛かる前の既存モデルに対し、微調整を行います。

精度の極み こうしたデータの一元化による対策は、Neme氏の複数のプロジェクトですでに実施されています。 その一つが、Anaheim Regional Transportation Intermodal Centerです。高い精度が要求された建築であり、それを実現できるソリューションとしてはCATIAソフトウェアが最も有名です。本建築は、3,000を超える接続部品を備える熱可塑性フッ素樹脂(ETFE)フィルム製の非常に複雑な屋根を特徴としています。

(画像提供: Neme DS社)

屋根を担当したサブコンは、自社で使用するソフトウェアが複雑な屋根の形状に対応できないと判断し、Neme Design Solutions社に参加を呼びかけました。 屋根の担当チームは、一元化された包括的な3Dモデルを開発することによって、極めて精度の高いファブリケーション図面を作成することができ、最終的に変更が必要となった部品は3,000点のうちたった4点でした。

ノードタイプ

設置されたノード

屋根との接続を調整したモデル

しかし、ラスベガスで行われた総合運用プロジェクトであるTivoli Villageこそが、おそらく一元化モデルならではのメリットを最も体現するものではないかと思われます。

ゼネコンのHardstone Construction社は、200万平方フィートの本プロジェクトを全面的に統括しました。CATIAの小規模エキスパート集団の一員として同プロジェクトの一元化モデルの開発に深く関与したNeme氏は、モデルのMEP(機械、電気、配管)部分を担当し、矛盾のない、現場で設置可能なモデルを作成しました。

本プロセスにより、Tivoli Villageプロジェクトの第一フェーズ(3億5,000万米ドル規模)は極めて効率的に実行されたため、変更指示はほぼ皆無でした。担当したゼネコンは複数分野で予算を達成しました。

(画像提供:Neme DS社)

次世代の可能性

一元化モデルの可能性を踏まえ、Neme氏は近く実現されると考える、ある事柄に期待を寄せています。 Neme氏は、次世代の3Dモデルはビジュアル表現や矛盾点を解決するツールを超える役割を果たさなければなければならない、と指摘します。未来のモデルは、現場での設置業務手順の向上、ファブリケーションのさらなる最適化、材料の無駄の削減、現場の安全基準の向上を実現することが求められます。

Neme氏にとってCATIAは、複雑でありながらも柔軟なモデルを作成する上で、他の追随を許さない卓越したプラットフォームです。しかしNeme氏は、ダッソー・システムズが航空宇宙業界で圧倒的な成果を挙げていることから、建設各社は、業界の標準プロセスを変革する上で、ダッソー・システムズが果たし得る役割に期待が高まっている、と述べます。

Neme氏は、ダッソー・システムズのプラットフォームの最新アップデートによって、同社のソフトウェアは真のコラボレーション・ツールへと発展を遂げたと指摘します。クラウドベースのプラットフォームは、プロジェクトチームが世界のどこからでも、リアルタイムにモデルを使い、業務を行うことを可能にします。更新された内容は、瞬時に全員に可視化されます。 こうした機能は、Neme Design Solutions社が提供する具体的なスキルセットを必要に応じて世界中で利用可能にし、Neme氏や同氏のチームが世界各地で同時に複数のプロジェクトを実施することを可能にしています。

文:森脇 明夫(ダッソー・システムズ)

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