<第2回>サイバーとフィジカルのあいだに

投稿者
米田尚登 (ダッソー・システムズ)
 

1. ITは何を変えるか

 

ITは空間、国家、企業を越えて、瞬間移動を行う

ここまで第三次産業革命について書いてきました。それでは、続く第四次産業革命とは何でしょうか。第三次がコンピュータによるブレークスルーであったとするなら、第四次はそれに続くインフォメーションテクノロジーによるブレークスルーです。第三次が影響を及ぼしたのはモーターの性能や、機械の性能、センサの性能、コンポーネント、ユニットなどの「閉じた」物とその設計開発プロセスの改革に過ぎませんでした。プレイヤーが勝ち組になるためにしたことは、設計者や仕組み(デザインルール)などの変革で、それほど多くはありませんでした。

 

一方、今度のIT革命は大きく違います。まず、コミュニケーション(情報連携)には質量はありませんから、通信とネットワークのインフラさえあれば、ルーターによって瞬時に地球の裏側の相手にまでもつながり、情報を伝えあうことができます。情報はその表現方法が規格化されていれば、国籍、企業の垣根を越えて伝えられます。すなわち、これまで、閉じた空間(センサーなどのコンポーネント)に囲われていた情報、あるいは、個々に独立して存在していた外部空間の情報は、場所、国、企業を越えて協調し始めます。

 

Gulf of Mexico, United States photo by NASA

 

こうした第四次産業革命の本質を考えると、それは現在の日本が情報の表現方法を規格化しようとしない事です。一方他国は早い時期にこの本質理解し既に規格化を進めています。規格化の流れは、これまでの設計の領域を越えて、保守やサプライチェーンまでも浸透していくでしょう。

 

ITは業務区分の壁を超え、サプライチェーンに浸透してモノとコトに関するコミュニケーションを提供

 

前回までかなり抽象的な話が続いたので、このあたりでサプライチェーンの具体的な話を挟みます。

 

ITはサプライチェーンにどのような効果を生むか、という問題です。工作機械の製造において、重要な指標である生産効率や設備稼働率に影響を与えるのは、外部調達、委託製造だとおもいます。例えば、CNCが入荷しない⇒制御盤の製作が遅れる⇒組立工程が止まる、となります。

 

たとえば東日本大震災の直後にLSI(大規模集積回路)が不足してCNCが手に入らない、ということが起こりました。しかしLSIの供給難がCNC機械の出荷難につながることがわかったのは、被災から大分時間が経過してからでした。要するに自社が制御盤を委託製造している場合、委託先の部品や素材入荷まで把握しなければ、自社の生産を管理する事はできないということいなります。しかし現状では包括的な管理が難しいため、各社は各工程に余裕を持たせることと、頻繁に社内会議を開いて調整を行うことで何とか対処しています。しかし、実際のサプライチェーンの対象となる部品や素材、加工工程などは、現在各社が把握しているより以上に沢山あり、委託調達の階層は想定よりもっと深いのです。

 

たとえばCNCひとつ例にとっても、制御盤以外には、表面熱処理、メッキ、板金加工等があります。

この例から、工作機械の生産効率や設備効率に影響を与えているのは、委託製造先からの外部調達にあることが分かります。しかもそのサプライチェーンはきわめて複雑です。

(この項、続く)

 

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<第1回>サイバーとフィジカルのあいだに

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3Dソフトウェア市場におけるパイオニアであり、3DとPLMソリューションのワールド・リーダーであるダッソー・システムズ(仏)の日本法人です。
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