<第1回>サイバーとフィジカルのあいだに

投稿者
米田尚登 (ダッソー・システムズ)

 

1. 第三次産業革命で学んだこと

はじめまして。ダッソー・システムズの米田といいます。私は本年2月から、弊社でダッソー・システムズ製品の認知と普及を行うエバンジェリストの仕事をしています。これまで産業機械メーカーで商品の企画・研究・開発・設計と、なぜか、事業再建などまで広く経験してきました。専門は電子工学で、その後制御・数値シミュレーション・塑性力学、モデリングなどまで、広く浅く手がけています。

 

さらに近年は、これまで取り組んできた業務をIT技術で改革すべく、利用者の立場からPLM(Products Life Management)の研究に従事していました。そして今年2月に弊社のメンバーとなり、利用者側から提供者側に入れ替わった訳です。この「研究」ですが、Industry4.0やIIC(Industrial Internet Consortium)などが発表される数年前に既に研究着手していたこともあって、良くも悪くも、独自の理論も持っています。そのような背景があり、今回の産業革命の歴史経験を皮切りに、IIoT(Industrial IoT)や、それらに関わる国際標準についてもお話していきたいと思います。

 

模倣から適応へ

さて、CNC(Computer Numerical Control)をご存じでしょうか。良くNCとも呼ばれますが、正確には頭にComputerのCが付くのです。なぜComputerが付くにいたったのかを大雑把に言えば、アナログの世界からデジタル化の時代を経て、コンピュータによるデシタル制御に移行したあとにCNCという数値制御の方法が生まれたので、NCと区別したのです。私はCNCの登場を第三次産業革命と解釈しています。

 

しかしここで、デジタルとコンピュータは同じではないか?という疑問が出てくるかもしれません。いいえ違います。IC(集積回路)やリレー(オン・オフの切り替え部品)は、デジタルではありますが、すなわちコンピュータではありません。距離や温度などをいったん数値に置き換えることを「デジタル」と呼びますが、ICにプログラムやマイクロプログラム(マイクロコード)の技術を搭載させ、デジタル化された数値を大規模かつ複雑に処理できるようになったのがコンピュータです。

 

制御手法の流れは、アナログ(コントロール)⇒デジタル(コントロール)⇒コンピューター(コントロール)へ変わった、とご理解いただけると思います。工作機械でたとえるなら、倣い旋盤(アナログ)⇒NC旋盤(デジタル)⇒CNC旋盤(コンピューター制御)です。電話交換機だと、交換手(アナログ⇒クロスバー交換器(デジタル)⇒IP電話ルーター(コンピュータ)です。

 

コンピュータ制御ではデジタルだけの制御に比較して高度で複雑な処理が行えるので、例えば重い物を持ち上げた際の機械のひずみを計算して歪(ゆが)み分だけ位置を補正することも容易にできます。従って高精度加工をするための機械は、重くて強くて歪まない機械よりも軽くて高速でしかもしなやかな動きができる機械が勝るのです。

 

ウェスタン・エレクトリック製造のクロスバー・スイッチ(1970年) from Wikipedia

 

拡大繁栄と縮小衰退、そして変化出来る企業と出来ない企業

デジタル制御からコンピュータ制御への移行は段階的に進みました。私は、この過渡期の後半に社会人となりました。この頃の機械は機械設計者がドラフターで図面を書き、制御・電気設計者は機械設計者の意図する動きを実現していました。それが大きく変わり始めます。コンピュータとデシタル化されたサーボモーターの出現で、重くて強い機械からしなやかに高速で動く機械へ進化が始まったのです。そうなると、静止した機械の設計ではなく、機械そのものの動き、すなわち運動方程式を理解した機械設計者が活躍する時代が訪れました。

 

では第三次産業革命はどのような変化をもたらしたでしょうか。革命の本質に気づき、設計の人員や体制を再編させた企業は、既存の市場のシェア拡大のみならず、新たな市場を開拓し、旧態依然とした企業は次々と淘汰されていきました。そしてCNC、センサ、モーターなどの新たな市場が生まれ制御機器メーカーが繁栄しました。私が当時勤めていた企業は、電気・電子・情報系エンジニアを大量に採用・育成し、そして、新時代の機械設計者へのシフトを行い、やがて技術供与してもらった企業をも傘下に収めてきました。

 

(続く)

ダッソー・ システムズ

ダッソー・ システムズ

3Dソフトウェア市場におけるパイオニアであり、3DとPLMソリューションのワールド・リーダーであるダッソー・システムズ(仏)の日本法人です。
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