Company NewsFebruary 19, 2016

キャスター谷本有香が聞く! 誰も知らないダッソー・システムズ Vol.5

最終回の今回は、鍛治屋社長ご自身がダッソー・システムズに入社されたきっかけを伺いたいと思います。
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聞き手/谷本有香(キャスター) 語り手/鍛治屋清二(ダッソー・システムズ株式会社 代表取締役社長)

「飽きて転職」を繰り返したら社長になっていた

谷本 さて、前回の最後に触れたように、鍛治屋社長ご自身がダッソー・システムズに入社されたきっかけを伺いたいと思います。これから就職する学生や、転職を考えるビジネスパーソンも興味があるところでしょうから。

鍛治屋 僕が就職したのは、まだバブル景気華やかなりし1980年代のことでした。当時、就職先として人気があったのは都市銀行や証券会社などの金融機関だった頃の話です。

谷本 でもその口ぶりだと、金融機関には……。

鍛治屋 そう(笑)。行きませんでした。就職したのは、ソフトウェア開発会社。経産省……当時の通商産業省の試算で、「この先、ソフトウェアの開発技術者が200万人不足する」という試算があったんですよ。これは将来性があるに違いない。そう思ってソフトウェア業界を選んだんです。

谷本 先見の明がおありで!

鍛治屋 それがそうでもなくて、大手証券会社からスピンアウトした情報部門が独立した大手のソフトハウスに入社したんですが、いまはもう会社自体が違う名前になっています……。

谷本 あらら(笑)。でも栄枯盛衰は世の習いですし、金融が花形だった頃にシステムやソフトウェア関連の業界を選ばれているということは、やはり先見の明はおありなのでは。

鍛治屋 自分では単に飽きっぽいだけなんじゃないかと思っています(笑)。最初に勤めていた独立系のソフトベンダーで、そこでは外資系証券会社の売買システムや勘定系システムを販売していました。文字通り「ケタ」が違うシステムづくりに携わったら、「グローバル」のスケールが感じられた。すると今度は外資が面白そうに思えてきた。結局その後、アメリカの外資系2社を渡り歩いたところで、ダッソー・システムズからお話をいただいて、今に至ります。決め手はわりと単純で、一度ヨーロッパの企業で働いてみたかったんですよ(笑)。

谷本 なんとシンプルな! いま何年になりますか?

鍛治屋 先ほど「飽きっぽい」と言ったのに、気づけばもう7年です。でもこの会社だから長持ちしているんだと思います。うちは同じルーティーンで仕事をしたい人には不向きかもしれません。たぶん、本社のCEO、ベルナール・シャーレスなんて僕以上に飽きっぽい(笑)。でもいい言い方をすれば、新しいことにチャレンジするという企業文化がある。

必要なのはアジャストする力

谷本 ダッソー・システムズにはどういう人材が合うんでしょうか。イノベーションを起こそうという気概があるとか?

鍛治屋 成功するためにいちばん大切なのはアジャスト(適応、順応)できる能力ですね。環境がすぐ変わる(笑)。ただ、うちの場合、ロジックで考えればなぜ環境や方針が変わったかはわかりやすいんです。でも、変化自体に対応できない人もいる。その意味では、変化に柔軟に対応できる素養があるかどうかは大きいと思います。

谷本 新卒は採用されてるんですか?

鍛治屋 ちょうど新卒採用を始めたんです。国内の大学のインターンシップで、フランスの学生なども引き受けたりもしています。あとインターンは帰国子女や理系の人間が多いですね。

谷本 英語は絶対に必要ですか?

鍛治屋 そうでもないですよ。マネジメントのトップになると必須ですが、普通に働く分には翻訳の専門部隊も社内にいますし、むしろ先に挙げたような柔軟性のような素養が重視されると思います。もっとも英語ができずに入社してきて、だんだん話せるようになる社員も多いですね。フランス本社のスタッフとのやり取りなんて、互いの母国語がわからないから、結局お互いにカタコトの英語になる。そうした環境にいると英語力はもちろん、コミュニケーション力が全体に底上げされるという面はありますね(笑)。

谷本 言われてみると、フランス企業の気風や企業文化って、なかなか想像がしづらいところもあります。

鍛治屋 確かにアメリカとは違いますね。アメリカ人は朝が早い代わりに、夜も早い。さっさと帰って家庭での役割を優先する。でもフランス人は毎晩20時くらいから0時くらいまで食事をしながらミーティングを頻繁にする。議論好きなんです。結論が出なければ翌日もまた言い合い(笑)。

谷本 そうして関係と議論を同時に深めていくというのは、日本人には合っていそうな気もしますが、それも入社しないとわからなかったことだと思います。ご自身が若手だった頃は、まだ転職も当たり前ではなく、むしろひとつの企業のレールに乗ることが美徳とされていた時代ですよね。鍛治屋社長自身は、なぜ20代の頃からチャレンジングな精神性を持つことができたのでしょうか。

鍛治屋 うーん。初めて外資に転職したときの社長がとにかくカッコよかったんですよ。実はいまでも私のメンターなんですが、当時から彼は外国人と対等以上に渡り合っていて、いつかそうなりたい、と。その背中を追って、いまここにいるという感じでしょうか。

リスクなきところには、成長もない

谷本 国内企業の経営者と外資――海外企業の経営者とは何が違うのでしょう。

鍛治屋 違いは究極的には個人、各企業に収斂されていくものだと思います。ただ傾向としてみるなら、もっとも大きい違いは、リスクに対する無用な畏怖の有無だと思います。

谷本 日本の経営者は怖がりすぎる?

鍛治屋 誰しも未知なる世界への恐れがあるのは当然ですが、その恐れを振り払って組織全体に推進力を与えるのがリーダーの役割です。よく海外で「日本の経営者は群れたがる」と評されることがありますが、「派閥」などで融通をきかせてきた慣習が経営者になっても残ってしまっているのだと思います。本来、誰よりも正しい判断がスピーディにできる人が経営者になってしかるべきなんです。だからある種の独断専行は当然といえば当然のこと。もちろん決断に対する責任も生じますが、一定のリスクは承知の上。100%成功することだけやっていたら、企業は衰退します。

谷本 リスクなきところに、企業の成長はない、と。

鍛治屋 だからソフトバンクの孫さんのように外部から新しい人を引っ張ってくる必要が出てくるんでしょう。本来は生え抜きで企業文化や風土をわかっている人がベストだとは思いますが、成長・発展する企業サイズに応じて自分のスタイルを変えられるような「経営者の素養」を持っている人は少ない。

谷本 さらに言うと、その「素養」を伸ばすための努力や環境も必要ですよね。よく「経営者の孤独」というようなことが言われますが、鍛治屋社長は相談相手や知見はどうやって得ているのでしょうか。

鍛治屋 僕はまだ相談できる相手がいるんですよ。フランス本社の人たちもそうだしメンターもいる。日常の業務とはまったく関係ないネットワークの人もいます。即断が求められるから、判断の精度を上げるためにあらゆる努力をします。本もよく読みますし、歴史書から学ぶことも多いですね。ちなみに作家で言えば伊集院静さん、戦国武将で言えば上杉謙信、三国志で言えば諸葛孔明が好きです。それ以前に活躍した項羽はより良いですね(笑)。

谷本 いずれも「男気」にあふれるとされる人たちですね。やはりダッソー・システムズに求める人材もそういう方々ですか?

鍛治屋 その「男気」が「成長欲」と同義であれば、必要ですね。勉強というと語弊がありますが、現状に甘んじず常に何かを吸収してやろうという意欲がある人と一緒に仕事をしていきたいです。

谷本 ダッソー・システムズがその先に見据えているものはなんでしょう。

鍛治屋 「現実を変える」ことですね。3Dエクスペリエンスという仮想現実は、想定されるモノやコトを現実に、そして日常に還元するための技術なんです。それはわれわれ日本人の生活だけではなくて、例えばアフリカなどの発展途上国にある貧困という課題を解決する方策や、紛争や戦争の抑止につながる技術かもしれない。「世界平和」というと陳腐に聞こえるかもしれませんが、われわれの技術の先にはまだ誰も見たことのない未来が広がっている。そう信じています。

Text/Tatsuya Matsuura Photo/Soichi Ise

<プロフィール>

鍛治屋清二●ダッソー・システムズ株式会社代表取締役社長。ソフトウェア関連の複数の外資系企業にて代表職等、要職を歴任したのち、2009年にダッソー・システムズ株式会社にPLM(製品ライフサイクル管理)バリューソリューション事業担当役員として入社。2012年5月代表取締役執行役員兼務。同年12月代表取締役社長就任。「3Dエクスペリエンス」製品群を活用して、仮想空間のなかで臨場感あふれる3D体験を一般消費者までもが共有できる環境づくりに邁進する。

谷本有香●経済キャスター/ジャーナリスト/コメンテーター。証券会社、Bloomberg TVで金融経済アンカーを務めた後、2004年米国でMBAを取得。その後、日経CNBCキャスターに。2011年5月からは同社初の女性コメンテーター。同年10月からフリー。トニー・ブレア元英首相、マイケル・サンデル ハーバード大教授、ジム・ロジャーズ氏の独占インタビューをはじめ世界のVIPたちへのインタビューは1000人を超える。また、ジャーナリストならではの観点から企業へアドバイスを行う。

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