キャスター谷本有香が聞く! 誰も知らないダッソー・システムズ Vol.2

 

聞き手/谷本有香(キャスター) 語り手/鍛治屋清二(ダッソー・システムズ株式会社 代表取締役社長)

 

「経験」がもたらすもの

 

谷本 「経験」を伴うことで、より精度の高い伝え方ができるようになる。それはわかります。では実際、ものづくりのプロセスにおいて「経験」が伴うと何がどう変わるのでしょうか。

 

鍛治屋 商品やサービスについて、マーケットのニーズをつかむ精度とスピードが上がります。初動の精度と速度が上がるのですから、商品・サービスの企画の立ち上げが加速しますし、ひいては生産、販売までを包括した経営判断の精度とスピードが向上します。消費者の経験を重視したものづくりから新たなサービスも生まれます。

 

谷本 やはりマーケティングは、それほどまでに大切ですか。

 

鍛治屋 大切です。例えば、ハイテク産業を例に挙げましょう。現在、日本のハイテクメーカーすべての営業利益を足しても、韓国のサムソンの半分程度です。20年前にはソニー一社とも比べるべくもないほど小さな企業だったのに、10年前にはソニーの売上げが抜かれてしまった。その後はみるみるうちに差がつき、現在では比べるべくもない。

 

谷本 そこまで差がついたのには、マーケティングの違いも大きい、と。

 

鍛治屋 そうです。実際、とあるハイテクメーカーの役員から聞いた話ですが、「昔、僕らは世界の消費者の声を聞かずにモノを作っていた」というのです。それは時代もあったでしょうし、日本という高品質至上主義という市場の上に育った企業文化のようなものもあったでしょう。高度成長期に育まれた、そうしたスタンスが未来永劫、成功し続けるための鉄則だと思い込んでしまっていた。

 

谷本 確かに「日米貿易摩擦」が発生するほど、輸出産業は順調でした。

 

鍛治屋 ところがあまりに順調だったため、日本のモノづくりは新しいスタイルを構築できなかった。例えばインドでモノを売るには何が必要か、ブラジルではどうか。いまなら当たり前のように行うはずのマーケティングをせず、「いいものさえ作れば売れるはずだ」という思い込みのもとに、商品開発をしてしまった。

 

谷本 ところが、韓国のハイテクメーカーは違ったというのですね。

 

鍛治屋 そうです。後発という持たざるものの強みもあったのでしょうが、サムソンはマーケティングを徹底的に人海戦術でやったという話でした。要は「その市場でウケるもの」ありきで商品開発を展開した。言い換えれば、消費者のほうをきちんと見ていたということになる。日本の企業はそこに気づくのが遅かった。「モノづくり大国ニッポン」という幻を長きにわたって追いかけてしまっていたのです。

 

谷本 「しまっていた」ということは、潮目は変わったということでしょうか。

 

鍛治屋 ハイテク――電機メーカーの意識はこの数年でずいぶん変わったと思います。もっとも、実は自動車などはもっと早くから消費者の嗜好やトレンドを、商品企画段階から取り込むということはやっていたのです。

 

谷本 なるほど。自動車などは日本も後発の産業でしたものね。

 

鍛治屋 そうですね。自然とアメリカなど相手国の環境をリサーチする文化ができていった。そうしたビジネス文化のようなものは、一口に国内企業といっても業種によって、もっと言えば、それぞれの社風によって、醸成のされ方は違っていたのだと思います。

 

「3D」が「経験」を強固にする。

 

谷本 「経験」に「3D」という軸が通ることで、何が変わるのでしょうか。

 

鍛治屋 2D(2次元、平面)よりも3D(3次元、立体)のほうが、人間の感覚に近いですよね。つまりよりスムーズに受け入れやすく、より強固な体験として定着しやすくなります。先に挙げた例以外ですと、例えば医療の現場などにも展開できるのです。

 

谷本 医療ですか!?

 

鍛治屋 そうです。例えば外科医って「手技」と言われるように医療の知識だけではなく、フィジカルを使った技術が必要になります。でも、外科医というのはご存じの通り、実践――つまり手術を積まなければ成長できません。しかし一方で、患者の立場になってみると、やはり”ゴッドハンド”に切ってもらいたい。スキルを高めるのが難しく、時間がかかる仕組みになっているのです。ところが、そのトレーニングをわれわれの3次元技術なら、補完することができるんです。

 

 

谷本 すごい! 手技のトレーニングにも役に立つのですね。

 

鍛治屋 それだけではありません。例えば、自分の心臓を手術するとなったとき、MRIやCTで画像診断を行いますよね。そのとき、3次元にモデリングした心臓の状態があれば、どこにどういう疾患があるか、確実に捉えることができる。すると、術式の策定の精度を上げることもできますし、術中に起きる可能性のあるアクシデントの予想にも役立ちます。

 

谷本 患者としても、うれしいテクノロジーですね。2DのCT画像を見せられながら、医師の説明を聞くよりも安心できるのではないでしょうか。

 

鍛治屋 仰るとおりです。誰もがわかる、見える形になれば、医師と患者の間のコミュニケーションもスムーズにできるようになるはずです。

 

谷本 医師も説明もしやすいでしょうし、患者も理解しやすい。

 

鍛治屋 実は僕も去年の暮れ、胆嚢の摘出手術をしたんです。でも医師に説明していただいても、腹落ちするレベルまでは理解しづらい。私の場合は経験豊富な主治医さんの腕を信じ込みましたが出来ることなら切る前に3Dで見たかった、、、ここだけの話、手術直前まで、ほんの少しだけ不安だったんです(笑)。

 

谷本 ご無事で何よりでした。そしてやはり「体験」を伴った言葉は、説得力が違うものですね(笑)。

 

Text/Tatsuya Matsuura Photo/Soichi Ise

 

<プロフィール>

鍛治屋清二●ダッソー・システムズ株式会社代表取締役社長。ソフトウェア関連の複数の外資系企業にて代表職等、要職を歴任したのち、2009年ダッソー・システムズ株式会社にPLM(製品ライフサイクル管理)バリューソリューション事業担当役員として入社。2012年5月代表取締役執行役員兼務。同年12月代表取締役社長就任。「3Dエクスペリエンス」製品群を活用して、仮想空間のなかで臨場感あふれる3D体験を一般消費者までもが共有できる環境づくりに邁進する。

 

谷本有香●経済キャスター/ジャーナリスト/コメンテーター。証券会社、Bloomberg TVで金融経済アンカーを務めた後、2004年米国でMBAを取得。その後、日経CNBCキャスターに。2011年5月からは同社初の女性コメンテーター。同年10月からフリー。トニー・ブレア元英首相、マイケル・サンデル ハーバード大教授、ジム・ロジャーズ氏の独占インタビューをはじめ世界のVIPたちへのインタビューは1000人を超える。また、ジャーナリストならではの観点から企業へアドバイスを行う。

 

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3Dソフトウェア市場におけるパイオニアであり、3DとPLMソリューションのワールド・リーダーであるダッソー・システムズ(仏)の日本法人です。
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