建築・建設May 7, 2015

【建築・建設業界コンテンツ】8: buildingSMART に注目~設計および施工の進化に向けた、オープンなアプローチの追及

ダッソー・システムズの公式ブログ建築・建設業界特集です: buildingSMART のCEOに就任したRichard Petrie 氏は、基準策定団体である buildingSMART を成長に導き、ひいては建築・土木・建設業界全体の改革を推進することを目標に掲げています。 続きは公式ブログへどうぞ>>>
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2013年にbuildingSMARTのCEOに就任したRichard Petrie 氏は、基準策定団体であるbuildingSMARTを成長に導き、ひいては建築・土木・建設業界全体の改革を推進することを目標に掲げています。

Richard Petrie氏 ( buildingSMART のCEO)

建設業界で施工、施主両方を経験してきたPetrie氏は、建築・土木・建設業界の進化の遅さに対するフラストレーションを肌で感じてきました。そして1995年の創設以来、BIM [ビルディング インフォメーション モデリング] ユーザーが使用する用語や表現と各種プロセスの標準化に向けて活動している非営利団体、buildingSMART のCEOに就任した後は、その内側から欧州の国々がすすめる、建設効率化重視の傾向を観察してきました。

Petrie氏は次のように述べています。「建設効率を重視する欧州の国々では厳しい予算制約の下、深刻な社会ニーズに応えていかなければなりません。社会ニーズに応える重要プロジェクトを可能な限り最善の方法で完了することが肝要であり、それには正確でわかりやすいデータが不可欠です。」

buildingSMART は、建築業界全体のデジタル化を推進することで、正確でわかりやすいデータの提供に向けた枠組み作りに取り組んでいます。

細分化の克服

buildingSMART では、建築・土木・建設業界が抱える2つの主要な課題への対応を模索しています。

1つ目の課題は、サプライ チェーンの細分化です。設計者、建築業者、施主の関心が建築物のライフサイクル全体へと拡大する中、各構成品、システム間の相互の影響を理解することがますます重要となります。このトレンドを察知したサプライヤーは縦の連携を強め、相互に関連のある製品、サービス、知識を提供しており、その一方で多くの設計者はBIMによって共有可能となった情報を通じて必要な情報を入手しています。

2つ目の課題は、施主が施工、管理、資産所有プロセスについて、十分な情報を提供されていることはほとんどなく、ここでも細分化が発生していると、Petrie氏は指摘します。例えば、設計上想定していた効率性が、実際の運用と合致するとは限りません。製品データを設計者から建築業者へ、建築業者から所有者や施設管理者へ移管するのが容易ではないことが1つの理由として挙げられます。

「結局、施主との分断された関係、サプライ チェーンの細分化により業界の変革が大きく遅れているのです」とPetrie氏は言います。

建設に対するユニバーサル アプローチの創出

buildingSMART では、openBIMを、オープン スタンダード (IFCといった標準規格等)に基づいた、建築物の協調設計、施工、運用への「ユニバーサル アプローチ」と表現します。このアプローチでは、使用するソフトウェア ツールに関係なく、プロジェクト メンバー全員がモデリングに参加できるようになります。また、広く参照される各種プロセスに共通の言語を作成し、ライフサイクル全体にわたって資産データを格納する1つの統合システムを提供します。

Petrie氏は、openBIMを細分化という業界の課題に対するソリューションの1つと考え、 buildingSMART を建築物とインフラ (土木建造物) のコスト、価値、環境パフォーマンスを改善する機会を提供する1つの手段ととらえています。

Petrie氏は以下のように説明します。「オープンな国際標準がなければ、真の改善の機会はありません。オープンな国際標準を作るには、標準の開発と普及を行う中立的な事業体が必要です。それが、 buildingSMART インターナショナルの役割なのです。」

ボランティアによって運営されている buildingSMART は、新しいビジョンを掲げ、昨年大きく前進しました。新たな標準の策定からデータの定義やサプライ チェーン全般にわたる各種プロセスの整合化まで、実際の進展と結果を示したのです。

相互運用性への強い要求

複数政府から要望が出ている案件については、強力に採用を推進しています。1つの例として、Petrieは英国政府が推している相互連携が、openBIMの方向性の1つであると指摘します。

英国は2012年以来オープン データを要件としている一方、2016年には政府の調達にBIMレベル2ドキュメントの使用を義務付けるプログラムを正式に立ち上げる予定です。

BIMレベル2ドキュメントという一連のメソドロジーは、建設サプライ チェーンをデータ環境での取引と運用に導くために考案されたもので、これにより政府は最も有力なリーダー企業に着目し、その支出プログラムの真価を発揮できるようになります。

Petrie氏によれば、これはテクノロジー主導ではなく需要側主導による動きであり、建設予算の使途が実際に変化することによって業界の文化変動をおこそうとするものです。「現実こそが、真の推進要因となり、我々が望む方向にプログラムを確実に前進させてくれるのです。」とPetrie氏は言います。

Petrie氏はさらに、これまでのところ英国においては予測された目標を達成しつつあり、2020~2025年に予定されているレベル3プログラムに向けた作業が進行中であると付け加えました。

Click to tweet: “Demand for #BIM L2 is a result of seeing change in how each construction dollar is spent”

建築のスマートな未来

Petrie氏は、buildingSMARTの取り組みをさらに広げ、未来の標準が現実世界のユーザーのニーズを正確に反映したものとなるよう、専門家によるコミュニティの構築を模索しています。国際レベル、各国支部レベルで働くボランティアが統一されたプロセスに従って、標準を策定、ユーザー コミュニティに展開していくのです。

Membership in buildingSMART International (buildingSMARTインターナショナルの参加資格) は、全世界の企業、政府機関、公共団体に開放されています。ダッソー システムズは、新しい標準検討委員会において完全な投票権を持つ国際会員として buildingSMART に参加しており、各国支部レベルでも子会社などを通して buildingSMART の会員権を取得しています。

ダッソー システムズは、他の主要な支持者と同様、共通のコミュニティでの協業こそが、openBIMから最大の効果をあげ、その勢いを加速できるという認識に立っています。

buildingSMARTの会員は、他の会員による地域レベルおよび国際レベルの活動全体からメリットを得ることができ、課題の洗い出しだけではなくソリューションの開発においても積極的な役割を担います。

「 buildingSMART は本質的に自主運営団体であり、ソリューションは会員が相互に支え合う共同開発方式で開発されます。そのため、会員の皆さんには関連するコミュニティで積極的に活動してもらう必要があります。」とPetrie氏は説明しています。

Petrie氏は、buildingSMARTのミッションを展開し、広く周知させるには時間がかかることを認めた上で、さらに次のように発言しています。「こうした一連の新しい標準が、テクノロジー関連のコミュニティに影響を与えたからではなく、企業運営のあり方に影響を与えたことから、変化が生じるのを期待しています。」

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