日本で開催された、ダッソー・システムズのイベントの基調講演でザハ・ハディッド・アーキテクトのクリスチアーノ・チェッカート (Cristiano Ceccato) 氏から、他業界から学んだ技術を、自社の革新的なプロジェクトにいかに適用してきたかについて説明いただきました。
チェッカート氏はまた、3Dモデリング 設計 等のデジタル情報が施工現場に送られる、つまり、コンピューターの完璧な世界から離れ、「不完全」な現実の施工世界に入るとき、何が起こるかかについて検証しました。
私からの建築・建設業界の仲間へのアドバイスは以下の通りです。
1.ボーイング社のように施工する
ボーイング社を題材とした領域横断的な製造プロセスの研究において、チェッカート氏は同社が革新的な業務プロセスを開発するということは大きな挑戦であり、ボーイングは挑戦するだけのでる能力があったと理解しました。
777型機の 設計 には全く新しいインフラが必要とされました。生産には新しい発想が必要で、その時点では存在しない市場を見越し、ボーイングは新しい生産方式の構築に成功しました。
ボーイング社が行ったことを簡単にまとめると以下の通りです:
- 情報を統合したモデルにより、大きなリスク低減、全社を通じた生産の効率化を実現
- パラメーター化により、市場に合わせて機体を拡張/縮小
- 構成部品と拠点を分散し、取引先間でのリスク共有を促進、より効率のいい市場への製品出荷を実現
世界中で個別に異なる 設計 構造物を1つ1つ制作している建築家たちもまた、ボーイング社の手法から学び、顧客向けのソリューション構築をよりフレキシブルかつ、効果的に実施でるようになります。
建築家が、情報、プロセスをよりうまく管理できるようになれば、リスクを低減し、よりうまく協業できます。
2.全体の中の個
デジタル・モデリングではシンプルな要素の繰り返しを通じて、高度に複雑なプロジェクトを効果的に施工していきます。そこには2つのレベルがあります。
プロジェクト・レベルでは、複数のプロジェクトに共通する特性を考察し、それを定義します。例えば、建造物のタワーを人口的なDNAを伴った3Dモデルの「ファミリー」とみなします。デジタル・モデリングで 設計 者は情報共有されたタワーの特性、たとえばユニット間のプライバシーの必要性、ゾーン作成の必要性等を参照したのち個別のニーズを適用します。
部品レベルでは、プロジェクトを様々に反復利用可能な、シンプルな製造部品単位に分解し、一見複雑に見える構造物を建設します。
建材のファブリケーターとの密な連携を通じて、 設計 者はファブリケーターと組み付け可能な各々のパーツを作成します。こうした部品は様々な方法で反復利用でき、最終的には、複雑な構造物を、現場で素早く組み立てられるようになります。
情報システムは、シンプルな部品を定義、関連付けし、大規模スケールでの使用できるようにします。
3.互換性の保持
デジタル・モデリング・プラットフォームの使用に際して、関連する、数多くの幅広い関係会社間で使用している構成部品、ツール間の互換性が大変重要となります。
デジタル・モデリングにはモデル間の互換性問題にエネルギーと時間を投資し、最終結果がプラットフォーム間及び最終プロジェクトで信頼できる情報変換であるようにする、強力な責任者が必要です。
これは継続的プロセスである必要があります。デジタル・モデルは単一の要素ではありません。継続的に、精度と情報作成のレベルを上げるべきものです。
4.人的要素を過小評価しない
分散したチームで作業をすすめる際に課題となるのが、全ての取引先が、確実に同じ 設計 の解釈に基づいて協業しているかどうかというとことです。高度な3Dモデリング技術では、多くのプロジェクト関係者が効率的に協業、やりとりをすすめ、 設計 意図について 合意形成をはかることができます。
例えば、3Dツールでファブリケーターは製造用のデザインテンプレートを使用して初期の部品モデルを 設計 者のビジョンにあわせこみます。これにより、確実にファブリケーターで完成させる部品が、元の 設計 意図を正確に反映したものとなるのです。
文:森脇 明夫ダッソー・システムズ、建築・建設業界のグローバル・マーケティング責任者革新的なリーン・コンストラクション・ソリューション・エクスペリエンスの立ち上げを主導、buildingSMARTのメンバー